一方、「2020年 30%」目標は達成できるかについては、「最初から達成できないと思う」(38%)が最多回答であった。
ただし、3年前との比較で「女性管理職は増えている」と3分の1の企業が回答しており、女性登用は前進していることが伺える。
※人材登用に関する「考え方」と「実態」、女性活躍推進に向けた施策等、詳細レポートはログインの上、ご確認ください※
■7割が女性管理職比率向上に取り組み
政府が掲げる指導的地位の女性割合「2020年 30%」目標達成に向けて取り組んでいるかを調査したところ、
「すでに達成している」(7%)、「目標達成に向けて取り組んでいる」(8%)
「目標達成は無理だが現状改善に取り組んでいる」(31%)、
「目標に関係なく取り組んでいる」(25%)と、
全体の71%が、なんらかの取り組みをしていることがわかった。
一方で、「目標達成は無理なので取り組んでいない」(12%)、「そもそも女性比率を向上しようと思っていない」(11%)と、取り組んでいない企業も合わせて2割強存在している。
〔図表1〕「2020年 30%」目標の達成に向けて取り組んでいるか(全体)
企業規模別に見ると、従業員1001名以上の大企業では、9割以上が取り組んでいる一方、中堅企業(301~1000名)、中小企業(300名以下)では、7割を切っており、20ポイント以上の差異があることがわかった。
なお、中小企業では、11%の企業が「すでに30%を達成している」と回答している。
〔図表2〕「2020年 30%」目標の達成に向けて取り組んでいるか(企業規模別)
■乖離する管理職登用についての「考え方(理想)」と「実態(現実)」
管理職登用についての「考え方」を調査したところ、80%の企業が「性別に関わらず適した人材を登用する」と回答しているが、対して「実態」を聞いてみたところ、回答比率は22ポイント減少した58%に留まった。
対して「働き方に制約の少ない男性社員を優先的に管理職にする」(20%)への回答が増加しており、実態は必ずしも、考え方に準ずることができないのが現状のようだ。
〔図表3〕管理職登用についての「考え方」と「実態」(全体)
また、正社員に占める女性比率を調査したところ、7割弱の企業が「30%未満」であった。
業態別でみると、メーカーでは81%(10%未満:29%、10~30%未満:52%)、非メーカーでも63%(10%未満:20%、10~30%未満43%)の企業で、従業員に占める女性の割合は「30%未満」だ。
性別に関係なく、公平に管理職登用される状況が実現したとしても、そもそもの女性従業員比率が低い現状では、政府目標「2020年30%」の達成は難易度が高い状況であることが見てとれる。
〔図表4〕正社員に占める女性の割合(メーカー/非メーカー)
■企業規模によって異なる「女性登用・活躍推進」の課題
次に、「女性登用・活躍推進」を進める上での課題に注目してみよう。
全体集計での最多回答は「女性社員の就労観」(43%)、次に「ロールモデルの欠如」(39%)と続く。
〔図表5〕女性登用・活躍推進を進める上での課題(全体)
企業規模別で見てみると、上位に上がる項目が異なっている。
大企業での最多回答は「ロールモデルの欠如」(63%)、次に「女性の定着率」(50%)、「長時間労働が前提のワークスタイル」(34%)と続く。
中堅企業での最多回答は「風土・社風」(56%)、次に「経営陣の意識」(53%)と続き、大手との比較の中では、女性の活躍推進に踏み出せていない様子が伺える。
なお、中小企業での最多回答は「女性社員の就労観」(36%)、次に「風土・社風」「女性の採用数」(共に32%)、「ロールモデルの欠如」(28%)であった。
〔図表6〕女性登用・活躍推進を進める上での課題(企業規模別)
なお、課題についての自由記述では、以下のようなコメントが寄せられている。
・女性従業員の競争意識と向上心。「みんなと一緒に、他と違うことはしない」という共通意識があると、指導的立場にはしにくい。(商社・流通/301~1000 名)
・職制転換制度は整えているが、実際に特定の女性を管理職に登用した場合、一般事務に固持している女性社員(=管理職登用を望まない女性社員)とのスキル・評価の区別が難しい。(メーカー/300名以下)
・労働法制上、女性の就労を制限されている業務のウェイトが一定程度あるため、女性の登用に限界がある。結果的に男性中心の社風になってしまう。(メーカー/1001 名以上)
・仕事内容の詳細を説明すると、女性に敬遠されてしまう。出張も多い。性別による特別待遇はせず、男女平等に扱うので、結果として女性が子を産み、育てながら働くことが難しい。(メーカー/300 名以下)
・女性の総合職採用を始めてからまだそれほど年数もたっておらず、管理職にふさわしい能力を発揮している女性が社内にはまだ少ない。(メーカー/1001名以上)
・実力のある女性がライフイベントで出産・子育てとの両立が必要になってくると、夜遅くなる業務に制限が必要となり、マネジメント職が難しくなる。(マスコミ・コンサル/301~1000 名)
■効果が出るまでには時間がかかるという認識
女性登用・活躍推進に向けた取り組みを調査したところ、「性別によらない人事管理及び運用」「短時間勤務や時差勤務などの柔軟な働き方」が4割を超えた。
また、「女性の採用数拡大」との回答も28%を占めており、自由記述でも「採用」に関するコメントが目立ったので、一部紹介しておく。
・採用時に能力のある女性を採用する。(商社・流通/300 名以下)
・新卒や中途採用において、意識的に女性を採用に心掛ける。(メーカー/300名以下)
・理工系の女子学生採用プロジェクト 。(1001名以上/メーカー)
・採用時の男女格差は設けない。(300名以下/商社・流通)
なお、企業規模が大きいほど、各施策に対する回答率は高い傾向にある。
〔図表7〕女性登用・活躍推進に向けて実施している施策(全体)
なお、これらの施策の効果を調査したところ、「時間は掛かるが効果はあると思う」との回答が全体では43%。すべての企業規模において最多回答となった。
なお、「全く効果がないと思う」と回答した企業は皆無であったが、大企業では「時間が掛かるばかりで効果は薄いと思う」との回答も1割あった。(中堅企業では2%、中小企業では1%の回答率)
〔図表8〕取り組みによる女性比率増加への効果(企業規模別)
なお、実施施策に「効果がある」と回答した企業に、効果的な施策を聞いたところ、最多回答は「短時間勤務や時差勤務などの柔軟な働き方」(37%)であった。制度的な施策と並行して、業務プロセスの見直しや、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現するシステム導入や、物理的制限を回避する手段を導入していくことも、大きな要因であると考えられる。
■「2020年30%」達成見込みは2割
政府目標「2020年までに指導的地位の女性割合30%」の達成見込みを聞いたところ、最多回答は「最初から達成できないと思う」(38%)であり、達成可能性を感じている企業は2割に留まる。
(間違いなく達成できると思う:4%、頑張れば達成できると思う:14%)
〔図表9〕政府目標「2020年30%」の達成見込み(企業規模別)
男女雇用機会均等法の施行から約30年、職場の男女差別はかなり改善されてきたが、女性就業率や、ジェンダーギャップ指標(世界経済フォーラム)を見ると、先進国標準から大きく乖離しているのが現状だ。
現在の管理職における女性の比率のデータをみても、「5%未満」(0%を含む)の企業が全体の7割を占めており、30%を超える欧米との差異は大きい。
〔図表10〕管理職に占める女性比率(全体)
ただ、「3年前と比較して女性管理職の割合は増えているか」という問いに対しては、3分の1の企業が「増えた」と回答している。施策が進んでいる大手企業では半数以上が「増えた」と回答している。
〔図表11〕「女性管理職」の増減(3年前との比較)(企業規模別)
マーケットのニーズが多様化し、少子高齢化による国内労働力が減少し続ける中、性別・年齢に関わらず、従業員のポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを発揮してもらうことは、「自社の発展」に向けて必須要素になると考えられる。
現状、政府目標も数値達成を義務付けるものではないが、国際社会からのプレッシャーや、政府目標を追い風と捉え、自社の成長のために、女性を含めた多様な人材の活躍推進を推進に向けた取り組みをする企業が増えることを願う。
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2015年2月18日~3月4日
有効回答:173件(1001名以上:32件、301~1000名:45件、300名以下:96件)
この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。
- 1