Vol.06

「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー

ソフトバンクが推進する人材オープンイノベーション 多様なコミュニティと対話が企業成長を加速させる【後編】

ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長 源田泰之氏
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

「人との対話が成長に繋がる」という教え

寺澤ソフトバンクという変化の激しい組織の中で、多くの画期的な人事制度を構築し、成功させてきた御社の人事の方々は、日々どのようなことを考えながら仕事をされているのか、非常に気になります。ということで、ここからは源田さんご自身にフォーカスを当てさせていただきたいと思います。先ほども少しお話に出ましたが、人事トップの青野専務執行役員から大きな影響を受けているそうですね。

源田はい。私はもともと販売や営業の仕事をしていたのですが、2008年に人事に配属となり、当初は右も左もわかりませんでした。そんなある時、さまざまな企業の人事責任者が大勢集まる会合があり、私も出席することになったのですが、周りはみんな年上ばかりだし、話はわからないし退屈だし、とにかく心の底から辛かったんですよ。その後、帰りのタクシーの中で青野から、「どうだった?」と聞かれたので、「辛かったです」と正直に答えたところ、「こういう集まりや人からの誘いは絶対断らずに、とにかく人と会いまくれ。それを3年続ければ、人生変わるぞ!」と言われました。そこでその言葉を信じ、愚直にやってきたら、途中から本当に気持ちが変わってきたんです。人と会うことにストレスを感じるどころか、むしろどんどん楽しくなり、人との繋がりがさらに人との繋がりを呼ぶような状態になっていきました。さきほどからお話している「人との対話が成長に繋がる」という考え方も、こうした自分自身の経験を通じて実感しています。

寺澤もちろん孫会長からも多大な影響を受けられていると思いますが、人材育成の面で特に印象に残っているようなことはありますか?

源田そうですね。これは孫が『ソフトバンクアカデミア』を立ち上げた際に話したことなのですが、中学生のときに地元で一番レベルの高い塾に入りたかったので、塾のオーナーに毎日のように頼み込んだところ、「じゃあ特別だ。入りなさい」と。しかし実際に入ってみたら、先生も教材も授業内容も特別なものは何もなく、ただただ普通で、とても驚いたそうです。ただその塾には一つだけ特別なものがありました。それは地元のトップレベルの子供たちが集まり、一緒に切磋琢磨する環境です。つまりこれだけで人は育つということ。この考えは孫の人材育成の根底にあるもので、私自身も大きな影響を受けています。実際、『ソフトバンクアカデミア』などのさまざまな施策の中で、さまざまなコミュニティを目にしてきましたが、多様性に富んだコミュニティであればあるほど、人の成長速度は加速するものだと実感しています。

ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長
源田泰之氏

1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒及び中途採用全体の責任者。 グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者。 ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー・取締役を務める。 孫正義が私財を投じ設立した、一般財団法人孫正義育英財団の事務局長。 採用では地方創生インターンなどユニークな制度を構築。幅広い分野で活躍する若手人材と、企業の枠を超え、国内外問わず交流を持つ。 教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。