Vol.06
「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー
ソフトバンクが推進する人材オープンイノベーション 多様なコミュニティと対話が企業成長を加速させる【後編】
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
会社の中に社員を閉じ込めてはいけない
寺澤異なったもの同士の対話を意図的に仕掛けられているのですね。日本の人事はどちらかというと内向き志向で、オープンイノベーションのようなものは一番苦手だと思うのですが、御社の場合は人事が率先して外に出て、外部との繋がりを作っているようにお見受けします。一方で『孫正義育成財団』のように、会社の取り組みとは別に、またリクルーティング活動とは無関係に、優秀な若い人たちとふれ合い、活躍の場を提供していく。しかも、そうした若者が世界中に散らばっていると。この壮大かつ未来に向けた人材戦略というのは、なかなかできないことだと思います。
源田おっしゃる通り、これはリクルーティング活動でも何でもなく、ただただ世界中の異能異才が自分の才能を解放し、活躍できる世界を作りたいだけであり、ソフトバンクグループの取り組みとは切り離してやっています。ただいつかソフトバンクが世界で一番人々に必要とされるような会社になり、こうした世界中で異能異才を伸ばすような活動が、結果的に何らかの形で返ってくるようなことがあればうれしいですね。ソフトバンクの理念に共感して、未来の時代を一緒に作っていける人は、たとえ社員でなくても、同志であり仲間。そういう人たちと手を組んでコミュニティを作っていくことが、中長期的には成長に繋がっていくと思いますね。
寺澤特出した能力を個々の企業が囲い込むのではなくて、ある意味シェアすると。そうすることで、まさにオープンイノベーションが起こり、影響力がより一層世界に広がっていくわけですね。
源田ソフトバンクグループの人材育成の考え方は、ソフトバンクグループが掲げる「群戦略」の“人”バージョンといったところでしょう。「群戦略」は、世界中の最も優れたテクノロジーやビジネスモデルを持っている企業に20〜40%出資し、それぞれが自律的に成長する企業の集合体こそが、ソフトバンクグループである、というものです。
寺澤一方、外部とふれ合うことで転職したり起業したりする人が出てくるリスクもあると思うのですが、そういった心配はありませんか?
源田もちろん一定のリスクはあると思います。でも大らかな目で見れば、起業して失敗したら、また戻ってくればいいだけですし、逆に起業して成功したなら、その会社と事業シナジーを生み出せるかもしれません。いずれにせよ、会社の中に閉じ込め、周りを見えなくしてしまうよりは、外との関わり合いを広く持たせたほうが、社員は大きく成長していくと思います。
ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長
源田泰之氏
1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒及び中途採用全体の責任者。 グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者。 ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー・取締役を務める。 孫正義が私財を投じ設立した、一般財団法人孫正義育英財団の事務局長。 採用では地方創生インターンなどユニークな制度を構築。幅広い分野で活躍する若手人材と、企業の枠を超え、国内外問わず交流を持つ。 教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。