Vol.05
「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー
人生100年時代に向けてシニア人材が活躍するための人事部門の支援の在り方とは
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
そのためにはシニア社員にどのように説得していけばいいのでしょうか?
「65歳定年延長(引き上げ)」を導入した企業を褒め称えている記事をよく目にします。しかし、すでにすべての企業が「実質的な65歳定年制」時代にあります。そのなかでの「定年延長」の意味は何なのか検討すべきです。
多くの大企業では継続雇用(再雇用)制度を中心に運用しています。継続雇用(再雇用)は「定年」を契機に「キャリア転換」「意識転換」を促すための装置として機能しています。定年を延長するか否かにかかわらず、職業生活が長期化するなかでキャリアと役割の変化は必ず起るので、それに応じたキャリア・役割意識の転換を行っていくべきだと思っています。そこでは「上り続けるキャリア」はあり得ない「『のぼる』キャリアからの転換」を行っていく必要があります。最後まで『のぼる』を続けることは難しく、職業人生である時点でキャリアの方向を切りかえることの方が自然です。
定年がなく、体力と気力がある限り働き続ける個人自営業主は、高齢期になると体力等に合わせて事業を縮小する、働き方を変える等してキャリアの方向を自然に変えています。企業に属する労働者にも、こうした自営業主に似たキャリアをとることが求められているのです。ここまで職業人生が長くなれば、「上方指向」から「水平指向」(幸福に「降りる指向」)へのキャリア転換が必要であり、「責任ある仕事」から「一担当者(プロ)としての仕事」への役割転換を踏まえたキャリアビジョン形成を行うべきです。
企業労働者のキャリアは組織のなかで働くことを前提にしているので、これをキャリア形成の『組織内自営業主化』と呼んでいます。最も重要なことは、『働くことは稼ぐこと』であり、『何をしたいのか』とともに、『どうすれば会社や職場に貢献できるのか』を考えて行動することへ気持ちを向けさせることです。
学習院大学 名誉教授
今野 浩一郎 氏
1971年3月東京工業大学理工学部工学科卒業、73年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。73年神奈川大学工学部工業経営学科助手、80年東京学芸大学教育学部講師、82年同助教授。92年学習院大学経済学部経営学科教授。2017年学習院大学 名誉教授、学習院さくらアカデミー長。
主な著書に、『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』(中央経済社)など多数。
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