Vol.05
「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー
人生100年時代に向けてシニア人材が活躍するための人事部門の支援の在り方とは
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
シニア社員に気持ちよく働いてもらうためには、どのように処遇することが理想ですか?
何度も申し上げるとおり、人事管理の原則は、仕事と能力と処遇の三位一体の均衡を図ることであり、そのもとで仕事に対して支払うが処遇の決め方の基本です。社内にあるこういう仕事をやってもらったから、いくらですと対応していくわけです。
これまで企業は仕事ベースでの処遇を行なってきませんでしたが、シニア社員の雇用では必要ですし、女性活躍推進の問題も同様です。様々な制約を持った働き手や多様なキャリアの在り方を求める人が多くなった昨今、従来型の人事管理はいつまでもつのでしょうか。
このようにみてくると、仕事ベースの処遇にしていくのは自然な流れですが。企業において現状では様々な面で難しいです。よって当面は現状の制度のまま、運用の在り方を変えていく方法で考えていくことです。現役社員向け長期決済型人事とシニア社員向けの短期決済型人事の二本立てで、運用していくことを提唱しています。
正社員は、大卒なら22歳から60歳までの長期間に渡って仕事をすることを前提に賃金を決定する「長期決済型」とし従来型を維持する。ところが高齢者は、例えば5年間といったように、働く期間が限定されている「短期決済型」なので仕事ベースにする。難しい仕事をしている人には多く支払い、簡単な仕事をしている人には支払いを少なく。働く期間が限定されているし、高齢者は特に教育する必要もありません。正社員以上に、仕事ベースで給料を払うことしかないと思います。
さらに「やる気のない」活用の仕方も変えなければなりません。そのためには定年を契機に、企業は「シニア社員から何を買うのか」、シニア社員は「会社に何を売るのか」を明確化し、雇用契約を再締結する。このような人事管理の転換に対して、なぜ仕事、人事管理、賃金が変化するのか合理的かつ丁寧な説明を行い、納得性を確保することが重要です。
学習院大学 名誉教授
今野 浩一郎 氏
1971年3月東京工業大学理工学部工学科卒業、73年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。73年神奈川大学工学部工業経営学科助手、80年東京学芸大学教育学部講師、82年同助教授。92年学習院大学経済学部経営学科教授。2017年学習院大学 名誉教授、学習院さくらアカデミー長。
主な著書に、『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』(中央経済社)など多数。
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