HRサミット2018プレインタビューVOL.03

社員のモチベーションを下げる評価の仕組みは変えられるか 〜社員同士が評価し報酬を与える「ピアボーナス」とは〜

Fringe81 株式会社 代表取締役CEO 兼 Unipos エヴァンジェリスト 田中弦氏
<インタビュアー>ProFuture株式会社 代表取締役社長 寺澤康介

ここ数年、働く人たちの会社観、仕事観が急速に多様化し、これまでの人事評価制度では、社員のモチベーションや生産性を高めることが難しくなっている。欧米で進むノー・レーティング(年次評価の廃止)の動きは、そうした流れを受けたものである。しかし、評価そのものを無くすわけにはいかず、新しい仕組みが今求められている。そうした中、社員同士という“横”の軸を使った新しい評価、報酬の仕組み「ピアボーナス」が脚光を浴びている。今回、日本のピアボーナス『Unipos』の生みの親であるFringe81株式会社の田中弦氏に、「働く人」と「会社」の関係の変化や『Unipos』誕生の経緯、活用することで得られる効果などについてお話をいただく。

従来型の人事評価では承認欲求の高い今の若い世代をモチベートできない

ここ数年で「働く人」と「会社」の関係性が大きく、急速に変化しているように見えます。今までのような人材マネジメントでは、社員のモチベーションや生産性を上げるのは難しい状況にあるのではないでしょうか。

田中氏

端的に言うと、会社の存在意義そのものが問いなおされているのだと思います。たとえば、クラウドソーシングを使えば、フリーランスで複数の企業の仕事を受けることができるし、副業もどんどん広がっています。1社に従属する必要がどんどんなくなってきていて、特に若い世代にとって会社に属する意味が薄れてきているとも言えるでしょう。私自身は経営者ですから、会社にはロマンがあるし、「一人では成し遂げられないことが、チームでならできる」と思っています。とはいえ、「働く人」と「会社」との関係は、確実に以前より「対等」なものになってきています。「大企業に就職すれば一生安泰」だった時代はもう終わりに近づいており、今は、会社で働く意味やロマンを意図的に感じてもらう必要性が出てきています。

「働く人」自身の変化が、「会社」の変化を促している側面もあるのではないでしょうか。今後、労働市場の中核を担う若い世代は、承認欲求が高く常に他者からの評価を求める傾向が強いとされています。また、SNSなどで即時に反応が得られるのが当たり前になっている世代だからか、年次評価は言うに及ばず、半期・四半期スパンの評価でもスピード感が遅いと感じ、モチベーションの低下につながる面もあるようです。そんな背景もあり、今、人事の世界では目標管理や評価をリアルタイムに近い形でフィードバックしていく「ノー・レイティング(年次評価廃止)」が話題となっています。これについて、田中さんはどう思われますか?

田中氏

松丘啓司氏の著書『人事評価はもういらない』の中で、GE社がノー・レイティングの事例として取り上げられていますね。GE社といえば、かつては9ブロックに代表されるような厳しい評価基準の象徴のような存在であり、日本企業の多くも追随していました。しかし、レイティングによって心理的安全性が損なわれ、高いパフォーマンスを発揮しづらくなっていたり、多様な人材を画一的な指標で評価することが難しくなったり、中間層やミレニアル世代のモチベーションが下がってしまったりと、時代の変化とともに課題も顕在化してきました。特に、GE社の場合、インターネットビジネスで競合に勝つために、仕事の進め方をウォーターフォール型からアジャイル型に転換する必要が出てきました。これまでの年次評価ではあらゆる点でデジタル競争に後れを取ってしまうため、個人の目標設定やフィードバックも機敏に実施しようと、ノー・レイティングとリアルタイムフィードバックを採用したというわけです。ただ、「リアルタイムにフィードバックする」のは言うに易しで、ラインマネージャーへの負担があまりにも大きい。導入にあたっての人事の混乱、戸惑いも大きいようです。

インタビューはまだまだ続きます。

  • 報酬を与える権限を社員に委譲する「ピアボーナス」なら評価のあり方が大きく変わる
  • 「社員同士を緩く繋ぐ仕組みを作りたい」という田中社長自身の問題意識から生まれた『Unipos』
HRサミット2018での講演情報
G1 9/19(水)9:30 - 10:40 HRテクノロジーの最新動向
G15 9/21(金)12:55 - 13:55 成長する企業で取り入れられている第3の成果給とは?

田中 弦 氏
Fringe81 株式会社 代表取締役CEO 兼 Unipos エヴァンジェリスト

1999 年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業に関わる。ブロードキャスト・コム(現Yahoo! 動画)の立ち上げに参加。 その後ネットイヤーグループ創業に参画。 2001 年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社。 2005 年ネットエイジグループ(現UNITED)執行役員。 モバイル広告代理店事業の立ち上げにかかわる。2005 年Fringe81 を創業、代表取締役に就任。2013 年3 月マネジメントバイアウトにより独立。2017 年8 月に東証マザーズへ上場を果たす。

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