「メンター制度」とは、所属する部署の上司とは別に、指導・相談役を担う社員が新入社員や後輩をサポートする制度のことです。Mentorの意味は、助言者、相談相手で、メンターに相談する側はメンティと呼ばれます。

1980年代にアメリカで人材育成の手法として制度化され、日本では、バブル崩壊後、年功序列や終身雇用制度を改め、組織のフラット化・スリム化が行われたころ、導入が始まりました。組織のスリム化や一人一人の生産性の向上は成功したものの、それぞれ自分のことに精いっぱいで面倒見のいい先輩や上司が少なくなっていき、組織内での人と人とのつながりが希薄になっていきました。すぐに退職してしまう新人や心の孤立をしてしまう社員が増えたため、社内でのメンタルヘルスの重要性とともに、メンター制度が注目されていきました。

メンター制の特徴は、内容が業務にとどまらず、人間関係、身内の悩みなど個人的な問題まで広く相談に乗ることです。リテンション政策の一環として導入することが多いです。メンターは、キャリアの先輩として「お手本」となり、精神的なサポートも含めて、親密なアドバイザーとならなくてはなりません。このメンターに継続的なサポートを受けることを「メンタリング」といい、役割モデルや成功モデルを示すことで行動へのイメージ付けを行い、実際の行動を促します。また、随時カウンセリングを行うことで、現状改善を行うものです。

メンター制度は、双方が目的意識をしっかり持ち、企業が率先して、効果的なメンター制度活用のための環境づくりをしなければ、時間軸やメンター側の負担増などによって形骸化してしまいます。メンター制度は、メンター側にも、自己成長や今後のキャリア形成を考えるきっかけ作りなどのメリットがあることを伝えることが重要です。また、双方の自主性に任せるだけではなく、メンタリングに必要とされる知識・スキル・意識を高めていくための事前教育をしっかり行うことも大切です。

制度導入の注意点としては、求められる人材像や人材育成方針などの育成に関する基準の明確化、若手指導をする際のメンターに期待される役割や能力をしっかり理解してもらうこと、そして、制度の導入がゴールではなく、「制度がなくても職場に人を育てる習慣が根付いた状態」を実現するために、一手段として制度を導入しているということが本来あるべき姿だという認識を忘れないようにすることが大切です。

メンター制度が社内文化として根付くと、世代から世代への人材育成の連鎖をもたらし、若年層の組織の定着を促し、中長期的な企業の成長、社会的にも重要な要素となるので、CSRの一環として考える企業が多いです。