「カーブアウト(carve out)」とは、「切り出す」という意味の英語。企業が事業の一部を外部に切り出し、ベンチャー企業として独立させる経営手法がカーブアウトと呼ばれます。
独立した新会社は、親会社から資金や人材面の支援を受けるほか、投資ファンドなど外部からの投資や人材も取り込むことで経営資源が潤沢となり、経営の意思決定もスピードアップするため、親会社のもとにとどまっているよりも事業が成長する可能性が高くなります。カーブアウトによって誕生した企業としては、1991年にNTTから移動体通信事業が分離されたNTTドコモが知られています。
近年、企業の経営に関して株主の発言力が強くなり、不採算事業への視線が厳しくなったことを背景として、“選択と集中”で振り分けられた不採算事業を切り出すために行われる側面もありますが、カーブアウトで切り出した事業の収益力を向上させ、事業価値を高めることができれば、将来、その事業を再び自社に取り込むこともできるほか、売却して大きな収益を上げる可能性も出てきます。
特に日本の大手企業の場合、将来有望な技術やビジネスモデルが開発され、事業化の提案が行われても、ゴーサインが出ず、社内で眠ったままというケースは少なくありません。事業化すれば新たな収益を生み出す可能性を持った技術・事業シーズ、また、それらの事業化への情熱を持つ人材を埋もれさせておかず、有効活用できることも、カーブアウトの大きなメリットです。
また、カーブアウトは、企業が子会社や事業の一部を切り出し、外部に売却する経営手法を指す言葉としても使われています。欧米などの海外企業の間では、事業ポートフォリオを最適化するための手段としてカーブアウトが定着しており、近年は、日本の企業が海外M&Aでカーブアウト買収を行うケースも増えています。カーブアウト買収には企業単位での買収とは違った難しさがあり、人事面では、転籍してくる人員数が十分か、事業のキーパーソンは含まれるかといったことを確認することが必要。転籍者に高いモチベーションを持って働いてもらうためのリテンション施策も重要になってきます。