「自分たちの待遇は違法だ!」
契約社員(雇用期間の定めがある従業員)の叫びである。
契約社員は派遣社員と同じく、不安定な働き方の代名詞のように思われている節がある。実際、契約期間満了による雇止めの可能性もあれば、賃金や福利厚生などの待遇面でも正社員と差異があることも少なくない。
従業員及び使用者の自主的な交渉の下で、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護と労働関係の安定に資することを目的とし、労働契約法が存在する。
平成25年には、契約社員に対する不利益な取り扱いを禁止する条文(労働契約法第20条)が加えられた。この労働契約法第20条を巡って、契約社員による労働基準監督署への相談もしくは裁判等が増加しているよ
うだ。
以下、労働契約法20条について解説し、企業が取るべき行動について紹介したい。
労働契約法第20条とは
改めて、労働契約法第20条を紹介する。「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」
上記内容から、ポイントは以下になる。
※「労働条件」について
この条文における「労働条件」とは、労働時間や休憩、休暇、給与だけでなく、福利厚生や災害補償など付帯する待遇も全て含む。例えば、正社員にのみ食堂利用可などの福利厚生がある場合、企業はその差異について不合理でないことを証明・説明できなければならない。
※「不合理」について
労働条件の差異が不合理かどうかは、下記等を考慮して個別の事案ごとに総合的な判断をするとされる。
(1)職務内容・責任
(2)異動(配置転換)
つまり、「労働条件の差異が不合理でない」というためには、正社員との職務内容・責任の差異や、異動の可能性の有無・またその範囲等が明確にされている必要がある。
ちなみに、通勤手当や食事手当については、差異があると不合理と判断される可能性が高い。
不合理とされた場合
この規定は民事的効力のある規定で、格差が不合理とされた労働条件は無効となり、不法行為として損害賠償が認められ得る。(過去に遡って金銭補償などを求められる可能性もある)また、無効とされた労働条件については、同等の業務内容や責任等の正社員と同等の労働契約になる可能性がある。
企業が取るべき行動
企業側が取るべき行動は、「仕事を正確に把握する仕組みづくり」ではないだろうか。正社員、契約社員等にとらわれず、企業内もしくは部署ごとに横断的に仕事量や内容を把握できれば、「契約社員だけど正社員と同等の働きをしている人」「正社員だけど契約社員と同等もしくはそれ以下の働きしかしない人」を探し当てることができるだろう。そして、その契約社員には正社員転換するキャリアパスがあったり正社員には賃金の減額等が可能であったり、労働条件の差異が不合理・不公平であると言われない、人事制度の構築(簡単な作業ではないが、運用と改良を繰り返しながら)していくことが良いのではないだろうか。
社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭