2023年冬のボーナス~3年連続で増加も、想定外の小幅の伸び
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2023年冬のボーナスの一人当たり支給額は、前年比+0.7%と3年連続で増加した(図表1)。もっとも、当社の事前予想(前年比+2.2%)を大きく下回る小幅の伸びにとどまった。コロナ禍で停滞した経済活動が元に戻りつつある中、回復が遅れていた運輸、郵便業(前年比+5.4%)や生活関連サービス業等(同+3.6%)に加え、需要の強い情報通信業(同+7.7%)の伸びが大きかった一方、医療、福祉(同-5.9%)や不動産業(同-5.1%)の減少が目立った。
厚生労働省が集計した2023年度の春闘の賃上げ率は3.60%と、30年ぶりの高い賃上げが実現した割には所定内給与が伸び悩んだこと(所定内給与:2023年12月前年比+1.4%)などが、ボーナス金額の伸びを抑制した。また、ボーナスが支給された労働者の割合は81.9%(前年差-0.7%ポイント)と、コロナ禍の影響で大きく落ち込んだ2020年(81.8%)と同程度の水準まで落ち込んだ。
なお、ボーナスが支給された労働者の割合は低下したものの、雇用者数が過去最高水準を更新する中、支給労働者数は4,162万人(前年比+1.1%)と、コロナ前の2019年を上回り、過去最多を更新した。その結果、夏のボーナスの支給総額(一人当たり支給額×支給労働者数)は16.5兆円(同+1.8%)と3年連続で増加した。もっとも、支給総額は名目で増加したとはいえ、増加幅は消費者物価(持家の帰属家賃を除く、2023年12月前年比+3.0%)の伸びを下回り、実質換算すると前年から減少した。総合的にみて、2023年冬のボーナスは期待外れに終わったと評価せざるを得ない。
2024年夏のボーナス見通し
厚生労働省「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2024年夏のボーナスは、一人当たり平均支給額は40万8,770円(前年比+2.9%)と3年連続での増加を予想する。(図表2)。企業規模を問わず、製造業、非製造業とも一人当たり平均支給額は、昨年2023年にすでにコロナ前のピークを回復しており、コロナ禍での落ち込みからの反動増による押上げ効果は概ね一巡した。それでも、今年の夏のボーナスが順調な増加を続けるとみられる背景に、企業業績と雇用情勢の堅調さがある。企業の経常利益(全規模、金融保険業を除く全産業、季節調整値)は、2020年中盤以降、増加傾向が続き、2023年4~6月期には過去最高を更新した。足元では2四半期連続で減少したものの、減少は小幅であり、過去最高に近い水準を維持している。その結果、企業の内部留保(利益剰余金)は、大企業を中心に増加が続いており、2023年末時点で571兆円と、過去最高金額を更新した(全規模、金融保険業を除く全産業、財務省「法人企業統計」より)。
また、経済活動の回復とともに人手不足は深刻さを増し、労働需給は逼迫している。日銀短観・雇用人員判断DIは対面型サービス業を中心に大幅な「不足」超が続き、企業の人手不足感が強まる中、完全失業率は2021年1月以降、2%台の低水準での推移が続いている。