一般財団法人 労務行政研究所は2024年1月31日、「賃上げ等に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査期間は2023年12月1日~2024年1月15日で、労・使の当事者および労働経済分野の専門家478名(労働側244人、経営側128人、専門家106人 ※「(3)2024年春季交渉で課題・焦点となる人事施策」については労働側271人、経営側136人)から回答を得ている。本調査結果から、2024年の賃上げの額や率、実施意向、および検討状況などが明らかとなった。
【2024年賃上げ】労使・専門家による予測は「賃上げ額:1万1,399円」・「賃上げ率:3.66%」と2023年実績並みの水準に

2024年の“賃上げ額”は「1万1,399円」、“賃上げ率”は「3.66%」に

日本経済は、コロナ禍からの経済活動正常化に伴い約30年ぶりに賃上げが実現するなど、停滞から成長へ移行する大転換期を迎えている。そのような中、2024年の賃上げはどのような見通しとなるのだろうか。なお、同研究所は賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、1974年から毎年本調査を実施している。

はじめに同研究所は、東証プライム上場クラスの一般的水準(定期昇給込み)を基にした「2024年の賃上げ見通し」(主要企業賃上げ額・率は厚生労働省調べ)を調査した。すると、全回答者478名の平均の「賃上げ予想額」は「1万1,399円」だった。また、「賃上げ予想率」は「3.66%」で、2023年実績並みの水準となる見通しだ。

労使別に平均値をみると、「労働側」が「平均賃上げ予想額:1万1,941円・賃上げ予想率:3.85%」、「経営側」が「同1万1,052円・同3.54%」だった。労働側が、経営側を賃上げ予想額で「889円」、賃上げ予想率で「0.31ポイント」上回る結果となった。
2024年の賃上げ見通し

定期昇給は労使ともに「実施」が約9割に。ベースアップの実施意向も強く

続いて、同研究所が「自社における2024年定昇・ベアの実施意向と検討状況」を聞いたところ、「2024年の定期昇給(定昇)」については、労働側は「実施すべき」が88.5%、経営側は「実施する予定」が89.8%で、労使ともに「実施」とする回答が約9割と大半を占めた。

また、ベースアップ(ベア)については、労働側は「実施すべき」が91.8%と9割を超えた。一方、経営側は「実施する予定」が48.4%で、「実施しない予定」の21.9%を大きく上回る結果となった。
自社における2024年定昇・ベアの実施意向と検討状況

2024年春季交渉で課題・焦点となる人事施策は労使ともに「人材の採用・確保」がトップ

最後に同研究所は、“賃上げ以外で24年春季交渉において課題・焦点になると思われる人事施策6項目”を挙げ、それぞれについて交渉で「話し合う予定があるか」を労働側・経営側に尋ねた。「交渉で話し合う予定」の割合をみると、労働側では「人材の採用・確保」(41.3%)が最も多く、以下、「諸手当の見直し」(34.7%)、「時間外労働の削減・抑制」(31%)と続いた。

対して経営側では、全項目において「交渉で話し合う予定」の割合が労働側より少ないものの、労働側と同様に「人材の採用・確保」(19.1%)が最多で、続いて「時間外労働の削減・抑制」(15.4%)、「諸手当の見直し」(14%)となった。
交渉で話し合う予定の人事施策
本調査結果から、2024年賃上げは、額で「1万1,399円」・率で「3.66%」の見通しだとわかった。また、2024年の定昇・ベアの実施は労使ともに「実施」の意向が強いことも示された。2024年の春季労使交渉がスタートする中、労使は近年の物価上昇を踏まえ、2023年を上回る賃上げを目指している。今後は大企業のみならず中小企業においても賃上げを進めていくと考えられるため、この調査結果を参考に、自社の賃上げについても検討していきたい。

この記事にリアクションをお願いします!