株式会社リクルートマネジメントソリューションズは2023年12月6日、「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」の中から、「70代以降に働くこと」についての結果を発表した。調査期間は2023年7月14日~16日で、一般社員、主任・係長クラスの正社員(大卒もしくは大学院卒)3,708名から回答を得ている。本調査から、70代以降も働きたい人の割合やその環境要因などが明らかとなった。
70代以降も働きたい人は“14.2%”。「モチベーション・リソース」がシニア世代の労働意欲に

「70代以降も働きたい人」は全体の14.2%に

2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では70歳までの雇用確保が努力義務となるなど、70代以降も働きやすい環境の整備が進んでいる。一方、個人が70代になったときに実際に働くか否かは別問題であるといえるが、70代以降も働きたい人はどの程度いるのだろうか。

はじめにリクルートマネジメントソリューションズは「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」と尋ねた。すると、「70歳以上」とした人は全体の14.2%だった。多くの人が60
代までには引退するイメージを持っているようだ。
何歳まで働きたいと思うか

今の仕事が自分の成長につながると思う40・50代は、70代以降も働く意欲を持つ傾向に

続いて同社は、70代以降も働きたい人とそうでない人の違いを分析するため、年代別に「仕事や会社に対する認識」をまとめた。なお、70代以降の働き方について考え始める40・50代にフォーカスし、従来、定年退職の年齢と認識されてきたであろう“60~64歳まで働きたいと考えている人”と、就業確保の努力義務である“70代以降も働きたいと思っている人”の現状認知の差を5歳刻みで調べている。70歳以降も働きたいと考えている人が、60~64歳まで働きたいと考えている人より高い場合は「プラス(+)」、低い場合は「マイナス(-)」で表記している。

年代別に統計的に差が見られた項目をみると、「現在の仕事が自分の成長につながると思っている40・50代は、70代以降も働きたいと考える傾向がある」とわかった。成長への期待と働く意欲には、一定の関係があることが推察される。
年代別の仕事や会社に対する認識
また、5歳刻みの年代ごとの統計的に有意な項目の違いから、“70代以降も働きたいと考えている人の特徴“もわかった。同社は、年代ごとの認識の特徴について、以下のように推察している。

<40代前半:40~44歳>
●「自分は良い職場環境で働いている」と実感できると、70代以降も働こうと思いやすい傾向にある
●70代以降の働き方にリアリティを感じていない人が多い

<40代後半:45~49歳>
●「会社・職場・顧客・社会への貢献感」が、70代以降も働こうとする意欲を高めている
●「貢献できている」実感が、長期間の勤労意欲につながる

<50代前半:50~54歳>
●リアリティをもって定年や引退について考え始める年代では、今の年収に満足していたり、現職の制度・仕組みが整っていたりする場合、70代以降は働く必要がないのではないかと考える

<50代後半:55~59歳>
●70代以降も働くかどうかを現実的に考える年代では、能力やスキルを身につけるための制度・仕組みが整っている組織に在籍していると、実際に70代以降も働き続けられるというイメージがつきやすい
●組織貢献を実感したり理念・ビジョンに共感したりしている人は、その会社で長く働き続けたいと考える

モチベーション・リソースが満たされているほど、70代以降の勤労意欲が高い

最後に同社は、「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、70代以降も働きたいと思っている」という仮説を立てたうえで、「70代以降も働き続けたい年齢とモチベーション・リソースのフィット関係性」を調査した。なお、モチベーション・リソースとは、働く人のモチベーションの源泉のことを指す。

その結果、「45~49歳」、「50~54歳」では、70代以降も働きたい人のほうがモチベーション・リソースにフィットした仕事に就いていると示された。また、「55~59歳」に関しては、統計的に有意とまではいえないが、70代以降も働きたい人のほうがモチベーション・リソースにフィットした仕事に就いていると明らかとなった。他方で、「40~44歳」に関しては、有意な差はなかった。

これを踏まえて同社は、「45~59歳の人に関してはモチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、長く働きたいと思っている」とした上で、「個々の特性を踏まえて、適した内容の職務・役割を期待したり、仕事の意義を伝えたりすることで、長く働きたいという意欲の向上につながるのではないか」との見解を示している。
働き続けたい年齢とモチベーション・リソースのフィット数
本調査結果から、分析対象とした40~59歳の共通の特徴として、70代以降も働こうと思っている人は60~64歳まで働こうと思っている人と比べて「今の仕事は自分の成長につながると思う」と実感している傾向にあるとわかった。また、そのほかの特徴としては「モチベーションの源泉が満たされている」人ほど、「70代以降も働きたい」と考えるようだ。組織の中ではベテランにあたる40~59歳は、自身の成長を感じづらいことも考えられる。企業では、成長に対するフィードバックや、個々人が担う仕事とモチベーションの源泉のつながりを認識する機会を作ることが必要になるのではないだろうか。

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