賃上げを「実施済み」とした企業は6割超に。業種別では「メーカー」が8割を占める
2022年の年末以降から賃上げに関する企業発表や報道が相次いでいることに加え、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の閣議決定により、「新しい資本主義」を加速するべく、賃上げはその狙いに大きく据えられている。賃上げについて、企業のみならず個人でも関心が高まるなか、実際にどの程度実施されているのだろうか。はじめにパーソルキャリアは、企業の人事担当者を対象に「賃上げの実施状況」を尋ねた。すると、「実施した」が60.2%、「今後実施予定で、具体的な内容まで決まっている」が7.6%で、合計67.8%が賃上げを実施、または実施予定としていることがわかった。これを受け同社では、「人材獲得が激化するなかで重要となっている従業員満足度や定着率向上の動きが高まったことが、賃上げ実施割合を押し上げた要因の一つと考えられる」との見解を示している。
業種ごとに見ると、「賃上げを実施した」とする企業は、「メーカー」(計80.6%)が最も多かった。以下、「金融」(75.2%)、「IT・通信」(74.1%)と続いた。
賃上げのために実施した対策は「人事制度の改定」が最多
次に、同社が「賃上げの目的」を尋ねたところ、「物価上昇への対応」が最も多く、以下、「社員エンゲージメント向上」、「定着率向上」と続いたとのことだ。4位に「新規人材獲得」があがったことからも、各社で“人への投資”に力を入れている様子が見受けられたという。そこで、企業を対象に「賃上げのために実施した対策」を尋ねた。その結果、最も多く回答が集まった対策は「人事制度の改定」(38.9%)だった。必要な人材の確保に重きを置いている様子がうかがえ、賃上げの目的である定着率の向上や新規獲得といった“人材への投資傾向”を裏付けるような結果となった。
賃上げの上昇率は「基本給・時給単価」の「2.1%~5%」が最多。“希望”とは大きな差が
続いて同社は、個人を対象に「賃上げが行われた費目と、その上昇率」を尋ねた。すると、最も割合が多かった上昇率は「2.1~5%」(21.8%)で、「基本給・時給単価」として給与に反映されていることがわかった。なお、以降も同項目での上昇が多く、上昇率「1.1~2%」(16.4%)、「0.1~1%」(15.6%)と続いた。次に、「希望する賃上げの費目と、その上昇率」を尋ねると、上がり幅は実績と同じく「2.1%~5%」(33%)だったが、回答割合は実績を10ポイント強上回った。また、希望する割合が高かった上昇率は「5.1%~10%」(31.6%)だった。
なお、「5.1%~10%」の上昇が実現した実績割合は3.6%にとどまっており、“希望”と“実績”の差は10倍以上の乖離が見られた。
希望する賃上げが叶わない場合に「転職を検討する」人は3割を超える
最後に同社は、「希望する賃上げが叶わない場合、転職を検討するか」を尋ねた。その結果、「転職を検討する」(12.4%)と「どちらかというと転職を検討する」(23.6%)の合計は36%だった。これを受け同社では、「実質賃金としての満足感が得難いという側面の他にも、賃金が上がらないことによる『成長実感の未充足』や『キャリアアップが見込めない焦燥感』も内在しているのではないか」と予測した上で、「転職を通じて新しい環境や業務経験の拡充を求めるケースが多く見られることが、本設問結果の要因の一つとして考えられる」との見解を示している。