中長期の育休取得者がいる割合は、取得率「20~50%未満」の企業を頂点に逆U字カーブ
2023年4月、従業員1,000名を超える企業において、男性育休取得率の開示が義務化された。政府も男性の育休取得を推進しているが、企業が男性の育休取得を推進するにはどのような課題があるのだろうか。まず、パーソル総合研究所は、人事・経営層全体(1,162名)を対象に、男性育休(産前・産後休業や育児休業および企業独自の特別休暇や有給休暇も含む)取得率ごとに、「1ヵ月以上の中長期取得者がいる企業の割合」を調査した。すると、「育休取得率1~5%未満」が37.1%、「5~20%未満」が48%、「20~50%未満」が60.6%、「50~80%未満」が53.8%、「80%以上」が36.8%だった。
「20~50%未満」をピークとして、逆U字カーブを描くように割合が推移し、「取得率80%以上の企業で、かつ長期取得者がいる」とした割合は、4割未満にとどまった。育休取得率が高くとも、中長期の取得ができているわけではないことがわかった。
「育休取得率5%未満」では「全社方針の発信」や「取得勧奨」の実施率が低い傾向に
次に同社は、人事・経営層を対象に、育休取得率ごとの「男性育休施策の実施率」を調べた。その結果、「全社方針の発信」の実施割合は、取得率5%以上の企業ではそれぞれ5割以上となった一方で、「取得率5%未満の企業」は5~20%の企業より22.3ポイント低い35.5%、「取得率0%」の企業は5%未満の企業より15.3ポイント低い20.2%だとわかった。また、「対象者への取得推奨」の実施割合を見ると、「取得率5~80%未満」の企業で5割以上、「80%以上」の企業で4割以上だった一方で、「取得率5%未満」の企業は5~20%の企業より18.5ポイント低い39.3%、「取得率0%」の企業は5%未満の企業より18.5ポイント低い20.8%だとわかった。取得率5%未満の企業では、男性育休に関する施策の実施率が低い実態が明らかとなった。
男性育休の人事課題は「不在時の対応」が上位。女性と比べ、事例や希望の少なさが課題
続いて同社が、人事・経営層(800名)を対象に「男性育休を推進する上での企業の人事課題」を調べると、「仕事の穴埋め方法」、「取得者が出た職場の負担増大」、「仕事をカバーした社員の評価・処遇」といった“不在時の対応”が上位だった。男性で懸念が大きい上位10項目のうち、男女差が特に大きかったのは、「取得事例の乏しさ」(17.4ポイント)、「取得希望者の少なさ」(16.5ポイント)、「長期での取得希望者が少ない」(16.1ポイント)、「周囲のメンバーの理解不足」(10.6ポイント)、「取得社が出た職場の負担増大」(6.5ポイント)だった。男性の育休は、特に取得事例や取得希望者の少なさ、周囲のメンバーの理解不足が課題となっていることがわかった。
個人では「同僚への迷惑」や「育休中の収入減少」に懸念。女性との差は?
次に、子どもがいない20~40代の男性(351名)に対し、「男性が育休を取得する上で懸念していること」を同社が質問すると、「同僚への迷惑」や「育休中の収入の減少」、「仕事能力やポジションといった中長期的キャリアへの影響」が上位であることがわかった。あわせて、男性で懸念が大きい上位10項目のうち、女性(578名)と比べて男女差が特に大きいものを見ると、「上司がいい顔をしない」が7.9ポイント、「自社に制度があるかわからない」が7.2ポイント、「上司に迷惑がかかる」と「顧客に迷惑がかかる」が同率の6.6ポイントだった。男性は特に、自社の制度の有無や上司・顧客への迷惑について懸念しているようだ。