株式会社帝国データバンクは2023年6月9日、「2023年夏季賞与の動向」に関する調査の結果を発表した。2023年6月2日~7日で、全国の企業1,095社より回答を得た。本調査から、前年と比較した2023年の夏季賞与の支給有無や支給額の増減、また支給額が増加する企業の規模や業界の割合などが明らかとなった。
夏のボーナスは約4割の企業で増加、平均で「2.4%上昇」の見込み。“物価高”や“雇用維持”への配慮も背景に

2022年冬と比較すると、賞与支給額が「増加」する企業が大幅に増加

昨今の物価高騰に企業の賃上げが追いついていない状況が続いている。厚生労働省が発表した、4月の「毎月勤労統計調査(速報)」によると、物価の変動を反映した「実質賃金」は前年同月比で3%減少した。また、「実質賃金」は13ヵ月連続で減少しており、マイナス幅はさらに拡大しているという。こうした状況の中、各企業における2023年の夏季賞与の支給予定はどのようになっているのだろうか。

まず帝国データバンクは、「2023年の夏季賞与の支給状況(1人あたり平均、前年比)」について尋ねた。すると、「賞与はあり、増加する」が37.4%、「賞与はあり、変わらない」が36.4%、「賞与はあるが、減少する」が9.3%で、「賞与あり」の企業は合計83.1%となった。一方で、「賞与はない」とした企業は11.2%だった。

同社が調査した「2022年冬季賞与」の支給状況と比較すると、「賞与が増加する」の回答率(2022年冬季:21.2%)は26.2ポイント増と大幅に上昇した。

あわせて、「夏季賞与の支給額増減の理由」についてフリーコメントを募ったところ、賞与はあり、増加する」とした理由には、「収支状況では賞与の増額はとても厳しいが、従業員確保・定着のため行う」(建設業)や、「新型コロナが『5類』に引き下げられ、売り上げが従前に戻りつつある。また従業員にとって電気代等、諸物価の値上がりが著しいため賞与を増やす」(飲食料品卸売業)といった声が寄せられたという。

「賞与はあり、変わらない・減少する」とした理由には、「当社のような中小零細企業は、仕入価格や電気料金などの上昇分を価格転嫁できず業績が悪化しているため、減額となる」(輸送用機械・器具製造業)や、「新型コロナから回復途中。電気代の値上げによる影響もあり、賞与は横ばいが若干の減少になる」(化学品製造業)などが挙がったとのことだ。
夏のボーナスは約4割の企業で増加、平均で「2.4%上昇」の見込み。“物価高”や“雇用維持”への配慮も背景に

企業規模が大きいほど夏季賞与の増加幅が高い傾向。業界別では「製造」がトップに

次に同社が、「賞与はあり、増加する」とした企業の割合を、規模別・業界別に調べた。規模別では、「大企業」が42.3%、「中小企業」が36.5%となり、2022年冬季賞与をそれぞれ20ポイント近く上回った。他方で、「小規模企業」は27.3%となり、全体(37.4%)より10.1ポイント低かった。企業規模が大きくなるにつれ、支給額の上昇幅が大きくなる傾向にあるようだ。

業界別では、「製造」が41%と最多で、全体を3.6ポイント上回った。また、「卸売」(40.6%)と「不動産」(40%)も4割にのぼった。
夏のボーナスは約4割の企業で増加、平均で「2.4%上昇」の見込み。“物価高”や“雇用維持”への配慮も背景に

夏のボーナスの1人当たり支給額は前年から「平均2.4%増加」

最後に、同社は「2023年の夏季賞与の従業員1人あたり平均支給額の前年からの変化」について任意回答で尋ね、有効回答企業861社の増減率の平均値を調べた。すると、全体では前年より平均で2.4%増加した。

規模別では、「大企業」が3.5%、「中小企業」が2.2%、「中小企業のうち小規模企業」が2.4%、それぞれ増加した。
夏のボーナスは約4割の企業で増加、平均で「2.4%上昇」の見込み。“物価高”や“雇用維持”への配慮も背景に
本調査結果から、2023年夏は8割以上の企業で夏季賞与を支給予定であることがわかった。また、そのうち賞与が「増加」する企業は4割に迫り、支給額も前年より平均2%程度増加することも明らかとなった。賞与の増加の背景には、従業員の雇用維持や物価高騰による経済的負担の軽減があるようだ。今後も賞与を含めた「持続的な賃上げ」をしていくためには、適正な価格転嫁やコストを見直す取り組みを続けていきたい。

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