公益財団法人日本生産性本部は2022年12月19日、「人材を生かす賃金」に関する調査結果を発表した。調査期間は2022年11月7日~28日で、同法人の賛助会員企業の人事担当役員155名から回答を得た。調査から、物価の上昇を受けた賃金制度の変化の動向や、制度変更における課題感などが明らかとなった。
物価上昇の影響を「賃金制度に反映する」とする企業が約6割に。“人的資本”への投資に対する重視度が高まる傾向も

賃金制度を「変えた」または「変える予定」とする企業は4割に

物価上昇や労働人口の減少による人材不足など、企業はさまざまな経営課題に頭を悩ませていると考えられる。そうした中、賃金制度の変革が重要なテーマとなっているが、昨今の状況を受けて制度を変化させる企業はどの程度あるのだろうか。日本生産性本部はまず、2020年~2022年度における正社員の「賃金制度の変更」について尋ねた。すると、賃金制度を「変えた」が36.8%、「今年度中に変える予定」は3.9%で、「変えた/変える」とする回答は40.7%となった。

また、賃金制度を「変えた/変える」とした人に対し、「賃金制度変更のねらい」を尋ねると、「社員のモチベーション・エンゲージメント向上」との回答が約6割になったという。一方で、「専門人材の確保」とする回答は1割以下となっている。
物価上昇の影響を「賃金制度に反映する」とする企業が約6割に。“人的資本”への投資に対する重視度が高まる傾向も

約6割が「物価上昇の影響を賃金に反映する」と回答

次に、同団体は「物価上昇への対応」を尋ねた。すると、「主に月例賃金に反映させることで対応する(ベースアップ)」が39.4%、「主に一時的な現金支給で対応する(賞与や手当等)」が18.7%だった。消費者物価の上昇を受け、何らかの形で「賃金に反映する」との回答の合計は58.1%となった。ただし、従業員300名未満の中小企業では「対応する予定がない」が半数を超えたという。
物価上昇の影響を「賃金制度に反映する」とする企業が約6割に。“人的資本”への投資に対する重視度が高まる傾向も

賃金が上がりにくい理由は「いったん上げると下げられない」が約7割に

続いて、「賃金が上がりにくい理由」を同団体が尋ねると、「いったん賃金を上げると下げることが難しい」が69%で最多だった。次いで、「労働生産性が高まっていない」が65.8%で、生産性を問題視する企業が多いことがうかがえる。
物価上昇の影響を「賃金制度に反映する」とする企業が約6割に。“人的資本”への投資に対する重視度が高まる傾向も

投資の重要度は「従業員への投資」が最多の9割に

最後に同団体は、「重要性が高いと考える投資分野」を尋ねた。すると、「従業員への投資」が90.3%で最多となり、「人への投資」を重視する企業の多さがうかがえる結果となった。以下、「IT機器への投資」が47.1%、「研究開発への投資」が45.2%、「機械設備(IT機器以外)への投資」が40%と続いた。
物価上昇の影響を「賃金制度に反映する」とする企業が約6割に。“人的資本”への投資に対する重視度が高まる傾向も
本調査から、物価上昇の影響を受け、何らかの形で賃金へ反映する企業が4割あり、「人への投資」が重要度を増している傾向がうかがえる結果となった。他方で、生産性を問題視する意見も6割を超え、生産性の伴っていない賃金上昇に不安を抱える経営者も多いようだ。先行き不透明な状況下ではあるが、今後は「何に」投資し利益を上げ、従業員に還元していくかを模索していく必要があるだろう。

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