CEO・社長の報酬総額は前年度より1割以上アップ。その要因とは?
デトロイトトーマツグループは2002年より、日本企業における役員報酬の水準、ガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況などに関する調査・分析を目的として「役員報酬サーベイ」を公開しているが、2022年度の状況はどのようになっているのだろうか。まず同社は、「CEO・社長報酬総額の推移」を分析している。すると、売上1兆円以上企業におけるCEO・社長の報酬総額の中央値は、1億1,224万円だった。前年の同値は9,860万円であり、前年比で14%の上昇率となった。上昇要因として同社は、「企業の好業績のほか、CEO・社長のインセンティブ報酬割合が近年、増加傾向であることがあげられる」(報酬割合の推移は2020年27%、2021年30%、2022年33%)と分析している。
「報酬委員会・指名委員会」の運営が十分に確立していない可能性も示唆
続いて、同社は企業における「ガバナンス体制」を分析した。すると、指名委員会等設置会社を除く上場企業のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は77.7%(784社)となり、前年比で10.2ポイント増加した。また、任意の指名委員会を設置する企業割合も71.8%(724社)と、前年比で11.7ポイントの増加となったという。しかし設置率の上昇に対して、年間の開催回数は、指名委員会等設置会社との乖離が顕著にみられた。報酬委員会・指名委員会を設置する企業では、両委員会の開催回数はともに年4回以上開催する企業が7割を超えたが、任意の報酬・指名委員会では、年4回以上開催するとした企業は4割前後となった(報酬委員会:35.1%、指名委員会:40.1%)。
「経営層の後継者計画」は2018年以降横ばい。後継者候補の確保・育成には課題か
続いて同社は、「社内経営層の後継者計画」を分析している。上場企業において経営者人材プールの設定を行う企業は「次期CEO・社長」で26.1%(269社)、「次期取締役・執行役・執行役員」で26.3%(271社)、「次期部長クラス」で29.3%(302社)で、いずれも3割に届かなかったという。さらに、キーポジションの特定をしている企業は、わずか6.1%(63社)にとどまった。同社によると、社内経営層の後継者計画整備については、2018年から横ばいの状況が続いているという。このことから、多くの企業で経営層の後継者計画が課題となっていることがうかがえる。上場企業における「社外取締役」の人数割合・報酬水準はともに増加傾向
同社は、次に「上場企業において、全取締役に占める社外取締役の人数割合」を調査している。すると、1/3以上確保している企業は77.3%で、前年比で13ポイント増加したという。また、プライム上場企業の社外取締役の報酬総額の水準は中央値で840万円だった。東証一部時代を含め、5年連続で上昇傾向にあるようだ。“取締役の多様化”で女性取締役・外国籍取締役を登用する企業が6割超に
また、「取締役の多様性」についても分析している。取締役として「女性取締役」あるいは「外国籍取締役」を登用している企業は61.6%となり、前年より9.5ポイント増加したという。「女性取締役のみ1人以上存在する企業」は54.3%で前年より10ポイント増加し、「外国籍取締役のみ存在する企業」は2%と前年より1.1ポイント減少したとのことだ。両者が存在している企業は5.5%となり、前年より0.7ポイントの増加だったという。「ESG指標の評価への反映」や「人的資本開示」の取り組み促進が想定される結果に
最後に、「ESG指標の役員報酬への反映」と「人的資本開示の状況」を分析している。すると、「ESG指標を役員報酬決定に活用している」とした企業は7.4%(59社)で、前年から1ポイント増加したという。また反映されているESG指標の上位には「CO2排出量」(27社)、「従業員エンゲージメント」(20社)、「女性管理職比率」(19社)があがったという。さらに、「人的資本の開示状況」は、「雇用形態の状況」51.6%(532社)、「ダイバーシティの状況」35.3%(364社)、「採用の状況」25.6%(264社)などが上位にあがったという。