近年では自然現象による災害が頻繁に起きている。最近では9月に茨城県や宮城県、栃木県などにおいて台風・大雨による災害も起きた。被災地の会社では操業停止等、甚大な被害・損害を被った会社もあるのではないだろうか。
このような自然現象による災害が原因で会社を休業する場合、従業員の給与をどのように支払うべきだろうか。
災害による休業時の給与の取扱い

時に残酷な労働基準法

労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めている。

「休業が使用者の責に帰すべき事由」である場合、つまり「会社の責任による休業」の場合は、従業員に対して6割以上の給与補償をしなければならない。

どのようなケースが「会社の責任による休業」に該当するのか問題になるが、例えば下記のようなケースが該当するだろう。

□不景気による操業停止
□親会社・取引先の業績悪化による連鎖的な休業
□会社の機械・設備の故障による休業
□採用内定者に対する入社予定日以後の自宅待機期間
□アルバイトを予定終了時刻より早く帰らせる場合
□運転資金の不足等による操業の全部または部分的停止による休業

取引先の経営事情によって連鎖的に休業をせざるを得ない場合であっても「会社に責任がある」と見なされるだろう。(建設業には特に多い)
つまり会社は「従業員の給与は最優先で支払え」「常日頃からリスクヘッジしてない会社(経営者)が悪い」と言われているようなものだ。
経営者にとって労働基準法は時として酷だ。

その休業は、「災害による不可抗力」か。

今回のような大雨による災害や地震のような天災の場合は、一般には「使用者の責に帰すべき事由」には該当しない。ただし、親会社・取引先の被災や交通手段の不全、風評被害による売り上げの低下の場合当のいわゆる間接被害の場合は、必ずしも「会社のせいではない」とは言い切れない。

従業員への休業手当の支払いが不要となるためには、災害による休業が「不可抗力」と言える状況でなければならない。

「不可抗力」とは、
△その原因が事業の外部より発生した事故であること
△通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること



ただし、災害や天災による休業日の給与を保障すべきか否かについては、「休業手当の支払い義務」という観点での判断もあるが、それだけで判断すべきではない。

例えば有給休暇を消化できていない状況であれば有休休暇扱いにしてもいい。
災害により経済的に困窮している従業員には、法律上の休業手当以上の保障をするケースもあるだろう。
従業員の置かれた状況や経済状態等、様々なことを考慮すべきではないだろうか。
場合によっては心からのお見舞いの言葉だけでもいい。
このような状況でこそ、失うものもあるが得るものもきっとあるのではないだろうか。


社会保険労務士たきもと事務所 
代表・社会保険労務士 瀧本 旭

この記事にリアクションをお願いします!