2023年冬のボーナス支給額は“前年に比べて増加”の見込み
昨今の物価上昇に対応するため賃上げを進める企業もあるが、今冬のボーナス支給の見込みはどうなのだろうか。第一生命経済研究所は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に基づき、民間企業における「2023年冬のボーナス支給額」について予測した。同研究所によると、民間企業の2023年冬のボーナス・1人あたりの平均支給額は、前年比で「+2.1%」となる見込みだという(毎月勤労統計ベース)。これは、冬のボーナスとしては3年連続の増加となる。コロナ禍で支給水準が低かった2020年、2021年からの反動で高い伸びとなっていた2022年冬のボーナス(+3.2%)と比較すると増加率は鈍化するものの、2023年の冬もボーナス支給額は増加するとの予測だ。
11月7日に公表された毎月勤労統計では、「2023年夏のボーナス支給額」は前年比「+2%」と、企業業績の改善を反映して2年連続の増加となった。ボーナスの交渉の多くは、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型が採用されている。2023年の春闘ではベースアップの大幅拡大が注目されたが、ボーナスについても、好調だった2022年度の企業業績を反映して増額で妥結する企業が多かった。夏のボーナス増に続き、冬についてもこの交渉結果が反映される形で増加が予想される。
中小企業などは前年より利益が増加。ボーナス増加見通しも、物価上昇に追いつかずか
また、毎期型の企業、あるいは組合が存在しない企業においては、より直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすいが、「2023年4‐6月期の経常利益」は前年比「+11.6%」と、2桁の増加となっているという(法人企業統計ベース)。原材料価格の高騰は下押し要因であるものの、価格転嫁が進んだこともあり、企業業績は底堅く推移しているとのことだ。利益の水準も高く、従業員への還元余力は存在すると見られる。こうした業績の改善や、中小企業を中心に人手不足感が強まっていることが、ボーナス増加の押し上げ材料といえる。中小企業は大企業と比較すると相対的に業況が厳しいものの、人材確保の観点からボーナスの引き上げが必要となる側面がある。大企業と比較すると伸びは控えめになると予想されるが、中小企業においても支給額は増加する可能性が高いといえる。
企業における今冬のボーナス増加が予想されることは好材料ではあるが、物価上昇が続いていることが引き続き個人消費の頭を押さえそうだ。「2023年9月の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)」は前年比「+3.6%」と、非常に高い伸びが続いており、年末時点でも+3%台で推移している可能性がある。賃金の増加ペースが物価上昇に追いつかない状況は、依然として変わらないだろう。同研究所は、「今冬のボーナス増加が個人消費の活性化につながる可能性は低い」と予想している。
同研究所では、企業における今冬のボーナス支給の平均額は前年比「+2.1%」となると見込んでいる。企業では、政府の調査やこうした民間シンクタンクの予測などを参考にしながら、自社でのボーナス支給について検討し、従業員のモチベーション向上につなげていきたい。