6割以上の大企業・中小企業が賃上げを実施済み。業種別では「メーカー」が8割を占める
2023年6月に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が閣議決定され、政府は構造的な賃上げの実現に向けて一丸となって取り組んでいる。賃上げに関する企業発表や報道が相次ぎ世間の関心が高まるなか、企業では実際にどの程度賃上げが実施されているのだろうか。まずパーソルキャリアは、企業の人事担当者を対象に「賃上げの実施状況」を尋ねた。すると、「賃上げを実施(予定を含む)」との回答は全体の67.8%(実施した:60.2%、今後実施予定で具体的な内容まで決まっている:7.6%の計)におよんだ。これを受けて同社は、「人材獲得が激化するなかで従業員満足度や定着率向上のための動きが高まったことが、賃上げ実施割合を押し上げた要因の一つと考えられる」との見解を示している。
業種ごとでは、「賃上げを実施した」とする企業は「メーカー」(80.6%)が最多で、以下、「金融」(75.2%)、「IT・通信」(74.1%)と続いた。
賃上げのために実施した対策は「人事制度の改定」が最も多く
続いて同社が「賃上げの目的」を尋ねたところ、「物価上昇への対応」が最も多く、以下、「社員エンゲージメント向上」、「定着率向上」と続いたという。そのほか、「新規人材獲得」が5位にあがっていることからも、各社で“人への投資”に力を入れている様子がうかがえるという。そこで、企業を対象に「賃上げのために実施した対策」を聞いた。その結果、最も多かった対策は「人事制度の改定」(38.9%)であることがわかった。賃上げの目的である定着率の向上や新規獲得といった“人材への投資傾向”を裏付ける結果となり、人材の確保を重要視していると推察できる。
賃上げ上昇率の最多は「基本給・時給単価」の「2.1%~5%」。“希望”との差が顕著に
続いて同社は、個人を対象に「賃上げが行われた費目と、その上昇率」を尋ねた。すると、最も割合が多かった上昇率は「2.1~5%」(21.8%)で、「基本給・時給単価」として給与に反映されていることがわかった。なお、以降も同項目での上昇が多く、上昇率「1.1~2%」(16.4%)、「0.1~1%」(15.6%)と続いた。次に「希望する賃上げの費目と、その上昇率」を聞くと、上がり幅は実績と同じく「2.1%~5%」(33%)だったが、回答割合は実績を10ポイント強上回った。また、希望する割合が高かった上昇率は「5.1%~10%」(31.6%)だった。
なお、「5.1%~10%」の上昇が実現した実績割合は3.6%にとどまっており、“希望”と“実績”とに10倍以上の乖離が見られた。
希望する賃上げが叶わない場合「転職を検討する」人は3割以上
最後に同社は、「希望する賃上げが叶わない場合、転職を検討するか」を尋ねた。その結果、「転職を検討する」(12.4%)と「どちらかというと転職を検討する」(23.6%)の合計は36%であることがわかった。これを踏まえて同社は、「実質賃金としての満足感が得難いという側面の他にも、賃金が上がらないことによる『成長実感の未充足』や『キャリアアップが見込めない焦燥感』も内在しているのではないか」と予測した上で、同様の要因から、「転職を通じて新しい環境や業務経験の拡充を求めるケースが多く見られる」との見解を示している。