夏季賞与、約4割の企業で平均支給額が「前年より増加」
昨今、物価の上昇に対して企業の賃上げが追いつかない状況が発生している。厚生労働省の4月における「毎月勤労統計調査(速報)」によると、物価の変動を反映した「実質賃金」は前年同月比3%減少した。これは、13ヵ月連続で減少しており、マイナスの幅はさらに拡大しているという。こうした状況のなか、企業では今年度、昨年度よりも夏季賞与を増額させるといった対応をとるのだろうか。はじめに帝国データバンクは、「2023年夏季賞与の支給状況(1人あたり平均、前年比)を尋ねた。すると、「賞与はあり、増加する」が37.4%と最も多く、以下、「賞与はあり、変わらない」が36.4%、「賞与はあるが、減少する」が9.3%となり、「賞与がある」とした企業の合計は83.1%だった。一方で、「支給なし」は11.2%だった。
「賞与はあり、増加する」とした企業の自由回答からは、「新型コロナが『5類』に引き下げられ、売上が従前に戻りつつあることと、従業員にとって電気代など諸物価の値上がりが著しいため賞与を増やす」(飲食量卸売)や、「収支状況では賞与の増額はとても厳しいが、従業員確保・定着のため行う」(建設)などの声が聞かれたという。
「賞与はあり、変わらない」または「減少する」とした企業の自由回答には、「新型コロナから回復途中。電気代値上げによる影響もあり、賞与は横ばい/若干の減少」や、「仕入れ価格や電気料金などの上昇分を価格転嫁できず、業績が悪化しているため賞与は減額となる」(輸送用機械・器具製造)などの声が寄せられた。
「賞与はない」とした企業の自由回答では、「新型コロナによる輸送貨物の激減や輸送量の低下、原油価格の高止まり、働き方改革による労働時間の制限で非常に厳しい状況であるため賞与を支払う余裕がない」(運輸・倉庫)や、「基本給より、歩合、能力給が多いため賞与の支給はない」(リース・賃貸)などの声があがったとのことだ。
大企業ほど夏季賞与は「増加」の傾向に。業界別では「製造」がトップ
次に同社は、夏季賞与が「増加する」とした企業の割合を「企業規模別」と「業界別」で比較した。企業規模別では、「大企業」が42.3%、「中小企業」が36.5%、「小規模企業」が27.3%だった。企業規模が大きいほど、夏季賞与を増額する割合が高いようだ。また、業界別に見ると「製造業」が41%で最も多く、全体(37.4%)より3.6ポイント上回った。そのほか、全体を上回った業界は「卸売業」(40.6%)、「不動産業」(40%)、「サービス業」(38.9%)の計4業界だった。
1人あたりの支給額は、前年より「平均2%以上」増加に
最後に同社は、「2023年の夏季賞与において、従業員1人あたりの平均支給額の増減率」を任意回答で尋ね、有効回答企業861社の平均値を調べた。すると、全体では2.4%増加していることがわかった。企業規模別にそれぞれ増減率を見ると、「大企業」で+3.5%、「中小企業」で+2.2%、中小企業のうち「小規模企業」で+2.4%となった。1人あたりの夏季賞与支給額は、企業規模を問わず平均して前年より2%以上増加していることが明らかとなった。