TISインテックグループのTIS株式会社は2023年2月3日、新たな人事制度を同年4月より導入すると発表した。同社は以前から、人材を最重要資本とした経営戦略の中で、人材に対する先行投資を積極的に推進してきている。今回、新制度の導入にあたり、評価・報酬・等級の3点を全面的に刷新するという。これにより、人材戦略の「働く意義」と「報酬」の改革をさらに推し進めていきたい意向だ。
TIS、「基本給最大17%アップ」を含む新人事制度を2023年4月より導入。人事評価や報酬など刷新し、人材の付加価値向上へ

グループビジョン実現に向け、「働く意義」と「報酬」の改革に注力

TISインテックグループは、グループ基本理念に「OUR PHILOSOPHY(OP)」を掲げており、ステークホルダーとの価値交換性を高めることで、事業活動を通して社会課題の解決および社会要請に対応した経営高度化を目指してきた。これにより、持続可能な社会への貢献、持続的な企業価値向上をめざす“サステナビリティ経営”を推進している。

その中で、グループビジョン2026の実現に向けた「構造転換」を目指し、2021~2023年の中期経営計画における「デジタル技術を活用したステークホルダーとの共創による社会課題解決の推進」を行ってきた。特に、「人材」を最重要の経営資本として捉え、その成長による付加価値向上に注力してきたという。

TISでは、人材に対する先行投資として「働く意義」、「働く環境」、「報酬」の3つの軸で社員エンゲージメント向上を目指す人材戦略を進めてきた。今回、2023年4月より導入する新人事制度により、3つの軸の中でも特に「働く意義」と「報酬」の改革をさらに推進させたい考えだ。

「働く意義」においては、“Must/Will/Canフレーム”を導入することで、社員の自律的な行動を促進し、会社と個人の価値交換性を高度化するマネジメント基盤としていくという。また、グループ基本理念を元に「OPコンピテンシー評価」、マネジメント職へ「ジョブディスクリプション(職務記述書:JD)」を導入し、目指す姿の理解や浸透を一層図る。これにより、社員一人ひとりが企業理念や目指す方向性に共感し、会社と自分の目標をすり合わせることで「働きがいと成長を実感しながら活躍できる会社」を目指すという。

また「報酬」においては、競争力のある報酬水準を実現したいとしており、事業を牽引する高度人材と若手層に重点投資するとのことだ。基本給について最大で17%、平均で6%の引き上げを行い、さらに大卒初任給を25万円に引き上げるという。これにより、高いパフォーマンスの発揮を促して付加価値向上につなげるとともに、高報酬を提示することで優秀な外部人材を確保する、「企業競争力の向上を通じた企業成長の加速」を目指す考えだ。

新人事制度では「評価」、「報酬」、「等級」を大きく刷新

なお、新人事制度では、主に「評価」、「報酬」、「等級」の制度において改定している。今回の大きな刷新ポイントは、以下の通りだ。

【評価制度の刷新ポイント】
●組織目標の意味を“自分事”として理解し、より自律的な行動につなげるため、「Must(期待役割)/Will(志)/Can(能力)」を半期ごとに上長とすり合わせ、目標設定を実施する

●OPの体現に向け、期待する行動を「OPコンピテンシー評価」として設定し評価する

●挑戦を後押しするため、業績評価はプロセスを成果自体と分けて評価項目設定し、成功に至らずとも挑戦の過程を評価する

●すべての評価を絶対評価とし、一人ひとりの多様なパフォーマンス発揮に即した評価と処遇を実現する

●定期的な対話によるパフォーマンス発揮のための支援や能力・キャリア開発を行い、目標達成の確度を高め、評価の納得感を向上させる
評価制度の全体像
【報酬制度の刷新ポイント】
●報酬のベースである「基本給水準」自体を平均6%アップし、人材価値向上による付加価値向上を促進する

●特に事業を牽引する高度人材と若手層に対しては基本給を最大17%アップし、大卒初任給も25万円に引上げることで重点投資する

●基本給は評価による影響をやや抑えつつ、賞与は個人評価を反映する比率を高めメリハリのある体系とし、安心して挑戦できる環境を構築する


【等級制度の刷新ポイント】
●期待役割を明確化するため、役割差異の不明確な等級は統合しシンプルな等級体系に変更する

●上位職種では職務・役割基準であるが、下位等級では役割×能力の等級体系とし多様な経験による成長を促進する

●マネジメント職は職務等級とし、ポジションごとに求める人材要件をJDに明確化することで、社員の自律的キャリア形成支援、適所適材を推進する
等級制度の全体像
同社は今後も、人材を「企業価値創造の源泉」かつ「最重要の経営資本」と位置づけ、積極的な投資を行っていく方針だ。このことで、社会との高付加価値化の善循環を生み出し、さらなる成長と企業価値向上を目指したいとしている。

昨今の物価高や円高の影響に伴い、賃金の引き上げを求める声も多いだろう。本事例のように、単に給与を引き上げることを目的とするだけでなく、評価制度や人事制度もあわせて見直すことで、人材の付加価値向上やエンゲージメント向上が図れるかもしれない。

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