人材育成では、「階層別の研修」が重視されている
現在、企業の人材育成方針では、どのようなことが重要視されているのだろうか。本調査では、はじめに18項目の「研修・人材育成テーマ」を挙げ、それぞれをどの程度重視しているかを6段階で尋ねた(「非常に重視している」、「重視している」、「やや重視している」、「あまり重視していない」、「重視していない」、「まったく重視していない」)。
その結果、「非常に重視している」と「重視している」、「やや重視している」の合計値がトップだったのは、「中堅社員の業務遂行能力の向上」で計87.8%となった。以下、「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」が合計86.3%、「課長層のマネジメント力の向上」が合計85.9%などと続いた。これらの上位3項目はいずれも「階層別研修」の内容となり、企業では若手や中堅社員から課長層を対象とした“組織の中核をなす各階層”について、人材育成を重視していることがうかがえる。
また、「ハラスメント研修」が合計80.2%となっており、2020年6月に「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行されたことで、より重要度が増したと予測される。あわせて「コンプライアンス研修」も合計81.4%となり、「法令順守に関わる研修」が重視されていることがわかった。
大企業が重視するテーマは、「女性リーダーの育成」や「ダイバーシティの理解」
続いて、「各研修・人材育成テーマの重視度」について、「非常に重視している」を6点、「重視している」を5点、「やや重視している」を4点、「あまり重視していない」を3点、「重視していない」を2点、「まったく重視していない」を1点とし、各テーマ項目の平均点を算出。さらに、従業員規模別に集計した(大企業:3,000人以上、中堅企業:300人以上~3,000人未満、中小企業:300人未満)。全体結果で回答の多かった「階層別研修の項目」の3位から遡って見てみると、第3位の「課長層のマネジメント力の向上」は、大企業:4.98点、中堅企業:4.86点、中小企業:4.57点という結果に。また、第2位の「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」は、大企業:4.9点、中堅企業:4.75点、中小企業:4.51点だった。そして、トップの「中堅社員の業務遂行能力の向上」は、大企業:4.84点、中堅企業:4.75点、中小企業:4.55点となっている。3項目共に、大企業だけではなく、中堅・中小企業でも重視する比率が高いことがわかった。
さらに、「大企業の結果と中小企業の結果の差異」に着目してみると、いずれの項目も大企業が中小企業を上回っており、特に乖離が大きかったのは「ダイバーシティの理解」で0.97点差、また「女性リーダーの育成」も0.94点差という結果となった。大企業は、「女性登用比率」や「女性活躍推進」に向けた取り組みについて情報開示が求められていることなどから、これらの点がより重視・課題視されていると予測される。