「学び直し」の機会を創出し、個の経験値として組織に活かす
人生100年時代と言われる現代、労働者が年齢に関わらず再び学習の機会を得ることで、「キャリア」と「学び」を反復する教育システム「リカレント教育」の重要性が増している。ブックマークスが2020年12月13日~26日、10代~60代の勉強カフェ利用者223名を対象に実施した「大人の学び」に関する調査では、「学び直しをしてみたい」(47.5%)、「すでに取り組んでいる」(28.7%)、「計画を立てている」(5.8%)という人の合計は82%と、8割にものぼった。ここからも、リカレント教育に対する意識は高まっていると言えるだろう。「学びを通じて幸せになる大人を増やす」をミッションに掲げる同社では、これまでも「コンピテンシーを活用した人事評価制度」や、それにともなう「1on1」、社員の自律的な学びを支援するための「読書手当」、「セミナー手当」、「複業(副業)の奨励」など、多様なキャリアを開発するための施策を実施している。
今回導入する「リカレント休暇」は、一定のキャリアを積んだ社員に学び直しの機会を与える、独自の休暇制度となる。本制度の目的は、社員自らが自己のキャリアや生き方を見つめ「学び直し」の時間と機会を得ることで、「自己啓発」や「主体的な生涯形成」を行うための支援をすること。さらに、社員が休暇で得た成果を活用し、組織のさらなる発展につなげたい考えだ。休暇の取得可能期間は、原則として最長6ヵ月間だが、復帰前面談の内容や本人の意向を踏まえ、最長12ヵ月まで延長することができる。休暇期間中は無給となるが、有給休暇の同時取得により、一定額の給与を受け取ることも可能だ。
本制度は既に運用を開始しており、実際に「勉強カフェのマネジャー」というポジションに就く社員1名が、通常業務では得難い語学やIT専門スキルを身につけるため、6ヵ月間の「リカレント休暇」に入っているという。休暇後は原則として休暇前のポジションへの復帰となるが、復帰前面談により、身につけたスキルを活かす機会を話し合う。同社では本制度の運用において、休暇中の社員が「戻ってこられる場所がある」、「休暇をブランクとせず、個人の経験値として受け入れられる」という、安心感を得られる仕組みにすることを重視している。
「社会人生活が50年を越える」と言われる現代において、企業には社員の学び直しの機会をサポートしていくことが求められるだろう。そのためには、周囲の理解とフォローだけでなく、組織全体の風土を醸成していくことも必要となりそうだ。