現状分析をする(プロット分析)
新しく会社を創立する場合を除き、会社には既に従業員がいます。当然、賃金が支払われています。さらに複数の従業員がいれば賃金に差があるでしょう。まず、現状のプロット分析(賃金分析)や簡単に仕事(職務)内容の確認をして、どのような賃金制度や考課制度にするか、などを検討します。プロット分析とは、従業員の賃金(固定給)と年齢で、「プロット図(散布図)」を作成することです。横軸を「年齢」、縦軸を「固定給」とします。このとき固定給は、完全固定給のみにしてください(通勤手当は除きます)。
従業員を序列する(ギャップ分析)
次に、賃金と実際の能力が「リンクしているかどうか」を確認します。私はこれを「ギャップ分析」と呼んでいます。賃金に関係なく、各従業員の能力だけを見て、順位付けをします。その際、ある程度は従業員同士を比較しても問題ありません。この作業も経営者の感覚で結構です。例えば、経営者が求める人材像に近い従業員を高順位にする、極端な場合だと経営者に近い従業員から高順位にするなどです。相撲で例えると、横綱は関取の最高峰です。横綱のポジションが、いわば相撲界が求める関取の最上位です。以下、番付順に大関、関脇など、どれだけ横綱に近いかを表すポジションとなります。このようなイメージで順位付けをおこないます。
そうすると、必ずと言ってよいほど賃金序列と能力序列が合わないケース(ギャップ)が出てきます。それは中途採用時の賃金の決定方法や昇給査定のプロセスなどが主な原因として考えられます。この作業の結果は、今後の作業である賃金制度の枠組みを作るときにとても重要になります。
各種手当を整理する
最後に、「手当」についてです。名称と内容が合わないものや、「調整手当」といった支給基準が不明確なものは廃止を検討します。代表的なものとしては、「家族手当」です。家族構成と能力はまったく関係ありません。「皆勤手当」も同様です。そもそも皆勤手当は、工場などのライン生産を止めないための手段として、作業員のモチベーションアップのために支給していました。しかし、現状は評価が難しいという理由などから、どのような職種にも支給している企業が多いようです。「役職手当」は役割、責務に対する手当なので、ある程度の金額は支給してもよいと思います。
手当の整理は、自社の企業カルチャーを考慮して十分に検討してからおこなってください。合理的な理由あいまいな手当はできるだけ廃止します。ただし、単に手当を廃止するだけでは賃金カットとなり、従業員に対する不利益変更になります。賃金制度改革の移行時は、原則「廃止した手当は基本給に統合」とします。しかし、基本給に統合すると「賞与」、「退職金」も連動しているので、コストアップになってしまうこともあります。そのときは「賞与」と「退職金」が基本給に連動しない仕組みを考えます。
このように現状分析をおこないながら、理想とする賃金制度を決定していきます。
真田直和
真田直和社会保険労務士事務所 代表
https://www.nsanada-sr.jp/