従業員の健康を保持する経営戦略
「経営戦略」を立てている会社は多いと思われる。これを行うためには、まず「経営理念」が確定されなければならない。従業員の健康を保持するという観点から、従業員の生命や健康が害されるという不幸な事態は、何としても回避するべきである。
そのためには、単に労働安全衛生法令を遵守するだけでなく、従業員の能力を生かして健康に働いてもらうことを事業活動として追求するよう、「経営戦略」として位置づけるべきである。
「経営戦略」においては、自社の現状分析が重要となる。たとえ、外部環境において “顧客ニーズの上昇”や“競合他社の出遅れ”といった取引の「機会」があったとしても、内部環境に従業員の疲労蓄積や体調不良という「弱み」を持ったままでは、攻勢をかけることはできない。
しかも、「弱み」を見誤ったまま環境分析をすれば、経営戦略も現状を認識できていない誤ったものとなるだろう。これでは、会社のステークホルダーである顧客や取引先、金融機関、投資家などに対する信頼が失われることになりかねない。
業界全体で長時間労働が慣行となっており残業代の金額が大きい、また、従業員が健康を害したり疲労やストレスを蓄積させたりして退職することが多く、人材が流出しているというケースもあるだろう。
だが、そのよう場合であっても、長時間労働を防止して残業代を減らすことができれば、コスト面においても競合企業との関係で優位に立つことができる。
労使が一致団結して実行し、従業員の労働時間や健康を継続的に改善するというPDCAサイクルを回しながら、「経営理念」の実現に向けた取り組みをすることが肝要である。
終身雇用制が崩れてきたとは言え、少子高齢化が進む状況下では、従業員に健康で長く働いてもらうことが優良な人材の確保につながり、ステークホルダーにも幸福をもたらすことになる。
一見迂遠とも思える方法だが、こうした取り組みこそが企業価値を高める。これは、今後の企業経営における必須要素とも言えるのではないだろうか。
佐久間大輔
つまこい法律事務所 弁護士
企業のためのメンタルヘルス対策室
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