「できない子は、生まれつきではなく、できる子であるわけがないという決めつけからつくられる」というのは、かのピーター・ドラッカーの言葉です。(出典:断絶の時代)

 小さいころから、周りの大人たちに「お前は駄目な子だ」「できない子だ」と言い続けられたり、そのような目で見続けられたら、自分に自信を持てなくなり力を発揮することができなくなるのは当然ですね。
しかし、これは子供に限ったことではありません。私たち上司が「ダメな部下だ」「できない部下だ」という目で見続けることで、メンバーに自信を失わせたりストレスを与えていることが多々あるのです。
 
 最も分かりやすい例としては「ゆとり世代」です。私は様々な企業でマネジャー研修を実施していますが、多くのマネジャーが新人や若手の育成に悩んでいます。その際に口に出るのが「ゆとり世代は本当にダメですよ」「何考えているか分かりませんよ、ゆとり世代は」と、「ゆとり世代」という言葉を繰り返し使う人が多いのに驚かされます。
 
 本当に「ゆとり世代」はダメなのでしょうか?
私は、毎年4月に数社の新入社員研修を実施します。いわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる若手の皆様に多く接してきましたが、決して「ダメ」ではありません。むしろ、厳しい就職戦線を乗り切ってきた精鋭たちばかりです。優れたコミュニケーション能力を持ち、パソコンについてはパワーポイントを使いこなします。私たちが新人の頃になかったたくましさや優秀さがあるのです。

 この若者たちは、上司から「ゆとり世代」と呼ばれるのが最も嫌だそうです。しかし、当の上司は「だから、ゆとり世代は駄目なんだ」と実際に言ったり、そのような目で見ていることが何と多いことか。最初のドラッカーの言葉のように、「君たちは駄目なやつだ」と上司自体が暗示をかけています。
暗示をかけられた新人は、徐々に自信ややる気を失っていくのではないでしょうか。

 これとは逆に、「だからベテランはダメなんだ」というのも良く聞かれる言葉です。ある企業で、「40歳以上の社員は変われないから、教育しない」と言っていました。このような目で見られたベテランはどう思うでしょうか?
「こんな会社でやってられるか!」と腹の底では憤慨し、やる気をなくすでしょう。しかし、40歳を超えて転職するのは難しい・・・。そこで、そこそこの仕事をして無難に過ごすことを選んでしまいます。そのような姿を見て、「やっぱりベテランはダメだ」とますますベテランへの偏見が増していく。

 いずれにしても、私たち上司がメンバーをどのように見るかによってメンバーのやる気や態度は変わります。つまり、「できないメンバー」をつくり出しているのは私たち上司自身のスタンスなのです。
どのような世代のメンバーも、「いいところがあるはず」「活躍できるはず」と信じて接することができるかどうかが問われます。
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