先日、入社2年目の社員の研修を行った際のことです。
あるメンバーが、「上司とうまくいっていない・・・」と悩みを打ち明けました。
上司の指示が細かすぎて、ついていけないというのです。
お客様との電話が終わると、「なんだ今の電話は!もっと、順序立てて話しなさい。
特に、最後のアポイントの取り方が・・・」と、すかさず指導が入る。
パソコンで提案書を作成していると、上司が画面を覗き込み
「この図は意味が分からないな。あと、色づかいがおかしい。いいか、通常提案書の色は同系統で・・・」と細かく指摘する。そのような日々が続いているとのこと。

きっと、上司は良かれと思ってやっているに違いありません。
気づいたときにすぐに指摘すれば、マイナス点が是正されると考えています。
その考え方自体が間違っているとは言いませんが、度を越えると問題です。
なぜなら、メンバーが「監視されている」と感じ始めるからです。
監視されていると、上司の目が気になって、伸び伸びと仕事ができなくなります。
ともすると、「上司に指摘されないやり方」を選ぶようになり、結果的にそのメンバーの個性を殺してしまうことにもなりかねません。
今の時代は、お互いの個性と個性が共鳴し、新たな価値を生み出す組織が成長しています。
上司の「思ったとおり」に動く部下が多くなってしまっては、没個性の弱体化した組織が出来上がるだけです。

では、なぜ上司はそんなにメンバーのマイナスポイントが気になるのでしょうか?
その奥には、「メンバーというのは、自分よりも出来が悪いのが普通である」という固定観念が眠っているのではないでしょうか。
特に、相手が入社数年目のいわゆる「若手」だったらなおさらです。
「こんな若造に、何が分かるんだ」という驕りが出ている可能性も考えられます。
ただ、今の若手は捨てたものではありません。
学生時代からPCを使いこなしていますから、資料作りがうまい。
授業で発表する機会が多いので、プレゼンすることに慣れている。
人間関係作りも器用です。

「美点凝視」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

その人の美点(強み・長所)を、じっくり見る(凝視)ということです。
人間は、とかく相手の欠点に目が向きがちです。
特に、上司は自分の部下(メンバー)の欠点が目に付きます。
「なんで、こんなこともできないのだ」と・・・。
欠点ばかりに意識が集中すると、だんだんとそのメンバーの良いところが見えなくなってきます。
「うちの部下は、全然ダメですよ」と嘆く上司は、大方美点凝視が出来ていません。
「欠点凝視」です。

細かく指示を出しすぎるというのは、「この人は出来ていない」ということが前提、つまり「欠点凝視」ベースの育成のことが多いものです。
美点凝視を意識すれば、自然にメンバーの行動に対するイライラが減ります。
すると、指示の数も減ります。
指示しないと動けない、うまく行動できない。
今の若手は、それほど子供ではありませんよね。
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