上場会社においては人的資本に関する情報開示が義務化され、「人材への投資」という視点からも企業の成長性・将来性が評価されるようになってきました。企業の継続的な成長のために、エンゲージメントを高める新たな人材マネジメントが求められています。なおここでいう「エンゲージメント」とは会社への貢献意欲という意味です。
HR総研が実施した企業に対するアンケートによるとエンゲージメントが向上している企業群では、「業況良い・やや良い」の割合が75%、その他の企業群では58%と、社員のエンゲージメントの向上が企業の業況に良い影響を与えていることがうかがえます。
出典:「ProFuture株式会社/HR総研」
「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=384
エンゲージメントを高める鍵は、社員が「この会社で成長していきたい」と思えるかどうか
私は、『全員を稼ぐ社員にする「最強チームのつくり方」』を出版したきっかけから、組織運営や人材教育について他社様から意見を求められる機会をいただくのですが、その多くが「従業員の士気があがらない」「1年未満で辞めてしまう」「やる気が上がらない」といった、いわば「社員が育たない」悩みでした。そんな悩みを聞くにつけ、私は大いにうなずいたものです。持ち込まれる悩みは「かつて私も苦しんだ」悩みそのものだったのですから。
前職のときは、業績コミットへの達成力は強い職場でしたが、それが無理せずできていたかというと、そうではありませんでした。私の方針や指導はいつも正論で、メンバーに反論の余地すら与えませんでした。正しいことをやっているのに、なぜ成果が出ないのか? 焦る気持ちから結果にコミットするのではなく、結果のみを追求する殺伐とした組織を作り上げてしまいました。
そんな私が、前職を卒業し、タカマツハウスで出会ったのが「社員が来たくなるような、幸せな会社」というものだったのです。以前の私には想像すら出来なかった会社です。なぜなら、私は給料をもらっている社員が会社に毎日来て、成果を上げるのは当然と考えていたからです。
社員が会社に愛着を抱き、強い結びつきを持つためには、企業の在り方が社員の生活や思い描く将来と重なり、「他でもないこの会社で成長していきたい」と社員が思えるものでなければならない。そう強く思うようになりました。
実際、会社でのやるべき行動が明確になった社員はメキメキと売上を伸ばしていくものです。会社から言われたことをやるのではない、「自分で決めたことをやり遂げる」その志は人を成長させるのです。
会社が個人に寄り添い、個人の幸せを叶えていけるか
といってもこれは、「特別な社員だけができる」のではありません。「誰でも」成長することができます。当社の社員も、「自らの目標」と会社の目標をリンクさせ、自分の人生と会社での目標の繋がりがイメージできるようになると、仕事に向き合う姿勢がまず変わります。社員は会社に自分の時間を切り売りするのではなく、仕事も自分の時間として自己実現のために会社に来ているという意識が生まれるのです。しかし、こうしたエンゲージメントの向上には、成果によって高い報酬が得られる制度を用意するだけでは足りません。いかに「会社が個人に寄り添い、個人の幸せを叶えていけるか」にかかっています。
ただし、それは一朝一夕ではできません。また、経営側も意識改革が必要です。本連載では社員のエンゲージメントを高める方法として次の4つをお伝えしていきます。
・落ちこぼれをつくらない~応援して囲い込む
・業務で不幸な人をつくらない~助け合う文化の醸成~
・期待して寄り添う~心のつながりの重要性~
・任せて任さず~手を放しても、目を離さない~
全員を稼ぐ社員にする最強チームをつくるためには、このポイントが非常に重要です。それが、社員の能力を引き出し、高いパフォーマンスを持続していくこと、そして社員や会社の幸せにつながっていくのです。次回以降から、具体的な方法をお伝えしていきたいと思います。
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