「コミュニケーション」とは
「コミュニケーション」とは、互いの考えや気持ちを伝える意思疎通や情報伝達のことを指す。ビジネスにおいては、報告・連絡・相談や、顧客とのやり取りなど、さまざまなシーンで必要となる。もちろんビジネスだけでなく、家庭や友人関係、地域間など、人間の生活において使われる分野・領域は幅広い。●「コミュニケーション」の意味と定義
「コミュニケーション」は、岩波書店が発行する『広辞苑』において「社会生活を営む人間の間に行なわれる知覚・感情・思考の伝達。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする」と定義されている。一般的に、コミュニケーションは情報伝達だけにとどまらず、意志疎通を図り、互いの心理や気持ちを理解し合ったときに成立すると見なされる。ちなみに英語の「Communication」は、ラテン語の「comm(ともに)」と「unio(一致)」に由来する「communis(共同の、共有の、義務をともに果たす)」が語源だ。
●「コミュニケーション」の言い換え
「コミュニケーション」は、以下の用語に言い換えることができる。ビジネスシーンにおいても活用できるため覚えておきたい。・意思疎通
・意思伝達
・相互理解
・対話
・意見の交換
・気持ちのやり取り
「コミュニケーション」の重要性
年齢・性別・国籍、経験や実績を問わず、人間関係において「コミュニケーション」は大切だ。その重要性を4つのポイントで説明する。●信頼関係の構築
「コミュニケーション」をとることで相手の感情や考え方、価値観を理解することができ、互いの人間性を把握することにつながる。相手を知ることこそが信頼関係を構築するための第一歩である。●情報共有の円滑化
情報共有の円滑化のためにも「コミュニケーション」は欠かせない。テクノロジーの発展により大量の情報が溢れている現代では、組織内で情報を共有し、処理することが求められるからだ。●ストレスの軽減・解消
何か意見がある時に、それを伝える相手がいなければストレスが溜まっていく。一方で「コミュニケーション」をとって自分の考えを述べることでストレスの軽減・解消になる。また、コミュニケーションが活発化すれば、会話することへの心理的な抵抗が減少し、より気軽に相談・質問しやすくなる好循環が生まれる。●チームワークの向上
活発な「コミュニケーション」は、チームの雰囲気と成果に影響する。相互連携がスムーズであれば、ミスやトラブルを未然に防げるだけでなく、互いのアイデアの組み合わせから新しい案が生まれやすい。その結果、チームワークと生産性の向上が期待できる。ビジネスにおいて「コミュニケーション」をとるメリット
企業や組織を経営・運営していく上で「コミュニケーション」は欠かせない。ビジネスにおいてコミュニケーションがいかに大切か。そのメリットについて解説しよう。●顧客の満足度向上
顧客や取引先とのやり取りの中で信頼を得るのは、「コミュニケーション」によるところが大きい。有意義な意見交換により、新たなニーズを発見したり、新しいサービスや問題の解決策を提案したりすることで、顧客の満足度が向上するからだ。●風通しの良い職場環境の構築
「コミュニケーション」が活発な職場は、風通しが良く雰囲気も明るくなる。そのため、役職や年齢・立場にかかわらず社員同士で自分の意見が発言しやすかったり、悩みを打ち明けやすかったりする。●従業員のモチベーション向上
積極的な「コミュニケーション」は、従業員のモチベーション向上においても重要だ。困難な課題にもチーム全体で連携して取り組むことで、各従業員の負担やストレスを軽減できる。また上司・部下、同僚間との信頼関係を築ければ、気軽に相談しやすくなるだけでなく、誰かの悩みに早期に気づき、サポート体制を作ることができる。そうしたアプローチが社員のモチベーション向上や離職防止につながる。●企業のイメージアップ
「コミュニケーション」が活発で社内の雰囲気が良ければ、従業員だけでなく、外部にも良いイメージを与えることができる。例えば求職者には、社員がいきいきと働く姿を見て、働きがいのある企業というイメージを持ってもらえるだろう。また取引先とのコミュニケーションが的確で信頼を獲得できれば、販路拡大や業績向上が期待できる。「コミュニケーション」を図る手段
「コミュニケーション」を図る手段は、大きく分けて4つある。言語や記号による「バーバルコミュニケーション」と、非言語による「ノンバーバルコミュニケーション」、そして文字や記号による「テキストコミュニケーション」と、映像や画像などを用いる「ビジュアルコミュニケーション」だ。それぞれを説明していこう。●言語(バーバル)コミュニケーション
言語(バーバル)コミュニケーションは、文字通り言葉による「コミュニケーション」だ。そのなかでも口頭によるコミュニケーションは、言語以外でも情報や意思を伝えられるため、細かな心理や情報を伝えやすく誤解を招く恐れが少なくなる。論理的に話を構成したり、声の調子やスピードを調整したりすることで、さらに相手に意思を明確に伝えることができる。●非言語(ノンバーバル)コミュニケーション
言語に頼らず、身振りや表情、声のトーンなどでメッセージを伝える手段を、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションという。気持ちを相手に伝えるために効果的で、言語と併用するなど適切に活用することで商談や面談をスムーズに進行することができる。ただし、文化によって解釈が異なる場合があるため、注意を要する。●テキストコミュニケーション
文字や記号を用いた言語のみの手段で、テキストコミュニケーションも存在する。手紙やメール、チャットなどがこれにあたる。インターネットが普及した近年はオンラインでのやり取りが一般化しているが、時間を気にせずに送受信でき、記録を後から確認できる利点がある一方で、感情を表現しにくいため、口頭に比べて誤解が生じやすい点には注意が必要だ。誤解を避けるための確認や言い換え、相手の立場を考慮した丁寧な言葉遣いが大切になる。●ビジュアルコミュニケーション
ビジュアルコミュニケーションは、服装や画像、映像、環境などの視覚的なビジュアルで情報を伝える手法だ。複雑な情報を表現しやすく、相手の記憶に残りやすいという特徴がある。色彩やレイアウトを工夫することで見やすさを高め、必要に応じてテキストと組み合わせることで、より効果的な情報伝達が可能となる。言語の壁を越えた国際的なコミュニケーションにも適している。「コミュニケーション」不足による悪影響
社内や組織内においてコミュニケーションが不足すると、さまざまな悪影響が生じる。ここでは、その主な3つを紹介していく。●トラブルの増加
コミュニケーション」が不足するとトラブルが増加する。これは、あらゆるシーンにおいて言える。チームで業務を進める際に、目的や進捗などが共有できていなければ、ミスやスケジュールの遅延が発生し、大きな問題へと発展する恐れがある。また、クライアントとのコミュニケーションが上手くとることができなければ、認識の不一致によって契約破棄に至ったり、信頼を損ねてしまったりしかねない。●モチベーションの低下
抱える業務量をオーバーしてしまった際に、それを上司に報告・相談できなければ、ますます負荷がかかり従業員はモチベーションを著しく下げることになる。また、テレワークの普及によって社員間での対話の機会が減ったことで、不安や孤独を感じやすくなっているのも現代の特徴だ。●生産性の低下
生産性の向上には、従業員・工程間の連携が肝となる。つまり業務上の確認がとれていなかったり、情報共有ができていなかったりすると、生産性の低下に直結する。さらに、ノウハウを共有できずに属人化してしまうことで、誰かが不在になった際に、品質の低下や進行の停滞が発生してしまう可能性も出てくる。「コミュニケーション」で問題が起きる原因
ビジネス上の「コミュニケーション」において、問題が起きる原因はさまざまだ。ここでは主な5つの要因について解説していく。●ミスコミュニケーション(誤解・遅延)
誤解や遅延によるミスコミュニケーションは、手違いや勘違いを生じさせたり、業務を停滞させたりする要因だ。円滑に業務を進めるためには、具体的な指示や詳細な説明を適切なタイミングで行う必要がある。●ハラスメント
パワハラ、モラハラ、セクハラなどのハラスメントは組織の雰囲気を著しく損ねる。例えば、上司が部下にパワハラを行っている場合、部下が上司に対して恐怖心を抱き、「コミュニケーション」への抵抗が強くなる。すると、業務上での必要最低限の報告・連絡・相談もできなくなったり、会議での発言が消極的になったりしてしまう。●ジェネレーションギャップ
ジェネレーションギャップも「コミュニケーション」の摩擦を生む原因となりうる。文化や価値観、行動指針が違えば、伝え方や感じ方が異なるからだ。世代間のギャップは簡単には埋められないため、お互いが価値観の差異を認識したうえで歩み寄ることが肝要だ。●部門間の連携不足
部門間の連携が取れていないケースでは、それぞれの目標や動きが分からず、業務の全体像が把握できない。各部門が独自の判断で業務を進めてしまえば、業務効率の低下だけでなく、対立や溝が生まれてしまう恐れもある。●暗黙の了解や過剰な配慮・忖度
日本企業の特徴である暗黙の了解や過剰な配慮・忖度も、「コミュニケーション」に支障をきたす要因となりうる。一方が了解していたとしても、もう一方はそれを理解していないかもしれない。また過剰な配慮や忖度のせいで、間違った意見に対して指摘ができなくなる。最悪の場合、トラブルや不正行為を隠蔽する一因となる可能性も考えられる。「コミュニケーション」をとる上で大切なこと
最後に円滑なコミュニケーションをとる上で大切なことを紹介したい。いずれもビジネスだけでなく私生活でも意識しておきたい重要なポイントだ。●相手の話を傾聴する
相手が話をしている時には、できるだけ丁寧に相手の話を傾聴することは、コミュニケーションをとるうえで最重要事項と言える。傾聴と言っても、ただ黙って相手の意見に耳を傾ければいいというわけではない。適切なタイミングで相槌を打ちながら、相手に気持ちよく話してもらうように心掛けると良い。●相手の考えや気持ちに共感する
聞き手側に回った際に、相手に共感することで、より相手の気持ちを汲み取ることができる。相手が自分とは反対の意見を持っていても、頭ごなしに否定してはいけない。まず相手の意見を聞き入れてから、そのうえで自分の意見を伝えるようにすべきだ。●「伝わっていないかも」という前提で丁寧に説明する
人は持っている情報を自分の知識や経験に結び付けて整理・理解してしまうものだ。しかし、それをそのまま伝えても、相手が理解できるとは限らない。前提として「伝わっていないかもしれない」というくらいの意識を持って、噛み砕いて説明すると良い。その結果、解釈のズレが生じにくくなる。●コミュニケーションの研修を行う
研修を通じて、リスニング力や効果的な非言語コミュニケーション、フィードバックの方法などを学ぶことも重要だ。企業や人事としては、社員の相互理解やチームワークの強化を図るために積極的に研修の実施を検討したい。●情報伝達・報連相を小まめに行う
「報連相(報告・連絡・相談)」を小まめに行うことは、業務上、円滑に意思伝達を行うための鍵と言える。定期的に進捗を報告することで問題の早期発見や解決が可能となる。また、なるべく早めに問題を報告したり、疑問点を相談したりすることで、信頼関係を築きやすくもなる。まとめ
「コミュニケーション」をとることは顧客の信頼を得るためにも、生産性を向上させるためにも非常に重要だ。ただし、単に会話の機会を増やしたからと言って、顧客が満足し、業績が上がるというわけではない。適切なタイミングで必要な情報を共有し、それを活用しなければ意味がないのだ。目的と状況に合わせ、正しく意思疎通が図れるように、コミュニケーションスキルを磨いてほしい。- 1