従業員は、考え方も人生もキャリアも、一人ひとり異なる。当たり前のことではあるが、これを企業の人材育成に当てはめようとすると、なかなか運用が難しい。富士フイルムホールディングス株式会社が取り組む「+STORY」(プラストーリー)は、一人ひとりの価値観の違いを尊重しながら、従業員の成長やチャレンジを促す自己成長支援プログラムだ。学びと挑戦を繰り返す「+STORY成長サイクル」をベースに、上司と部下が対話をする「+STORY対話」、学びのプラットフォームである「+STORYアカデミー」、多様な従業員がそれぞれのストーリーをライブで語る「+STORY LIVE」といった施策をつなげ、従業員一人ひとりの成長を支援している。「変化を作り出す企業」を目指す富士フイルムグループが、この取り組みに込めた想いとは何か。役職者たちを、どのようにして巻き込んでいったのか。個々の施策が社内にどんな影響を与えているのか。富士フイルムホールディングス株式会社 執行役員 人事部長 座間 康氏に伺った。

第12回 日本HRチャレンジ大賞『人材育成部門優秀賞』

富士フイルムホールディングス株式会社

事業戦略と従業員の成長・チャレンジを連動させる自己成長支援プログラム「+STORY(プラストーリー)」

従業員が自己成長に責任を持ち、上司はその部下との対話を通じて個々人の状況や価値観を理解し支援できるようにする仕組み。上司と部下の対話の場を設けることに加え、従業員の主体的な学びを支援・促進するための学びのプラットフォーム「+STORYアカデミー」や、多様な従業員の強みを共有することを目的として毎月開催される社内オンラインライブ「+STORYLIVE」等の取り組みにより、社員の自己成長を多面的に支援する優れた取り組みであると、高く評価されました。

プロフィール

  • 座間 康 氏

    座間 康 氏

    富士フイルムホールディングス株式会社
    執行役員人事 部長 兼 富士フイルム株式会社 取締役 執行役員 人事部長

    1987年、富士フイルム株式会社に新卒入社。マーケティング、国内営業、人事、海外営業を経て、2019年富士フイルム株式会社の執行役員 人事部長に就任、2021年より富士フイルムホールディングスの執行役員 人事部長に就任し、現在に至る。

従業員一人ひとりの成長を促す制度であるとともに、富士フイルムグループの文化を創るための自己成長支援プログラム「+STORY」

この先も変化し続けるためには、従業員一人ひとりの能力を最大限発揮する取り組みが必要

――今回受賞されました貴社の自己成長支援プログラム「+STORY」についてお伺いする前に、まずはきっかけについて教えていただけますでしょうか。

富士フイルムグループは、かつて急速なデジタル化の進展によりコア事業だった写真フイルム事業の縮小という危機に直面しました。そこで2000年代に大きく事業の構造変革を行ったことは、多くの方がご存知だと思います。事業ポートフォリオを大幅に変えていく中で、様々なアイデアやイノベーションが生まれ、苦労しながらも会社は成長してきたのです。おかげさまで、この改革は世の中に高く評価をいただいています。このように事業構造を変革してきたことにより、私たちが実感していることは立ち止まってはいけないということ、つまり変化し続けなければならないということです。変化し続けるためには、従業員の力が欠かせません。なぜなら、これまでの変革の原動力は、従業員の力に他ならないからです。そこで富士フイルムグループを持続的に発展させていくためには、従業員の力を最大限発揮する取り組みが必要だと考え、2020年11月より「+STORY」をスタートしました。まずは富士フイルム株式会社からこの施策をスタートし、グループ会社に広げていきました。

――「+STORY」とは具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

「+STORY」は、従業員自身が自己成⾧に責任を持つとともに、上司が対話を通じ、個々人の状況や価値観を理解し、支援できるようにする仕組みです。そのためには、従業員の能力を最大限発揮させる上で、「多様性」も大切なキーワードになります。多様性というのは、年齢や性別などの属性にとらわれないことはもちろんですが、何よりも一人ひとりの個性や人となりを理解し、尊重することです。その人の価値観や考え方などを、仕事の目標面談と別の対話の機会を設けて上司が部下をしっかりと理解して、一人ひとりの挑戦意欲を醸成していくことが、具体的な取り組みのひとつ「+STORY対話」のベースです。
従業員一人ひとりの成長を促す制度であるとともに、富士フイルムグループの文化を創るための自己成長支援プログラム「+STORY」


この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。
続きは記事をダウンロードしてご覧ください。

●部下への精神的支援が弱いという課題が役職者にあった
●なぜ社内オンラインライブをアーカイブに残さないのか
●「+STORY」は制度や仕組みではなく、文化を創る取り組み



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