「評価制度」の設計は、社員の処遇のみならず、エンゲージメント、成長へのモチベーション、採用競争力、そして事業の成長そのものなど多様な領域に影響を与える。特に高度な専門性を保有する社員が多数所属する企業の場合、その専門性がいかに評価され、どのようなキャリアを描けるのか関心は強いだろう。NTTデータグループで基盤領域を担うNTTデータ先端技術株式会社は従来、組織やプロジェクトをマネジメントする能力の発揮を評価する人事評価制度を運用していた。しかし企業規模の拡大、お客様の期待の高まりを背景に、社員の高度な技術力や専門性をより評価すべく、制度の大幅な変革に取り組んだ。今回、NTTデータ先端技術株式会社 取締役常務執行役員 CHO, CRO, CFO 人事総務部長 冨岡洋子氏と、人事総務部 人事担当部長鈴木聡氏にインタビューを実施し、変革の背景や新制度の仕組み、導入における工夫、そして社員のキャリア意識の変化などについて話を伺った。

第12回 日本HRチャレンジ大賞『人材マネジメント部門優秀賞』

NTTデータ先端技術株式会社

「技術で社会に貢献する」NTT データ先端技術の新たな人事給与制度
~マネジメント軸と専門性の軸の2 次元フィールドで多様なキャリアを実現~

マネジメント力を中心に評価し処遇を決定していた従来の枠組みから新たな評価制度へ移行。組織やプロジェクトをマネジメントする能力の発揮を評価するManagement Bandに加え、技術力や専門性の発揮を評価するSpecialty Bandを導入し、2軸による2次元空間を社員が自由に選択し移動できるようにしたことで、社員が自らのキャリアのオーナーシップを持つことを通じて多様なキャリアの実現に貢献していると、高く評価されました。

プロフィール

  • 冨岡 洋子 氏

    冨岡 洋子 氏

    NTTデータ先端技術株式会社
    取締役常務執行役員 CHO, CRO, CFO 人事総務部長

    1989年、NTTデータ通信株式会社(現・株式会社NTTデータ)入社。2012年、広報部長。2017年、株式会社 NTTデータ ユニバーシティ代表取締役社長。2020年、株式会社NTTデータ 執行役員 総務部長。2022年、同社執行役員サステナビリティ経営推進部長。2023年6月より現職。

  • 鈴木 聡 氏

    鈴木 聡 氏

    NTTデータ先端技術株式会社
    人事総務部 人事担当 担当部長

    1991年、NTTデータ通信株式会社(現・株式会社NTTデータ)入社。人事部勤務。2015年、第二金融事業本部 企画部 事業企画担当部長。2019年7月より現職。

マネジメント軸に加え技術力や専門性を評価することで、社員がキャリアのオーナーシップを持てるNTTデータ先端技術の「2次元評価フレーム」

なぜマネジメント力だけではなく、技術力や専門性を評価する仕組みが必要になったのか

――取り組みについてお伺いする前に、まずは貴社の事業内容について教えていただけますでしょうか。

冨岡氏:当社は、お客様にさまざまなITサービスを提供するNTTデータグループの一員として、主に基盤領域を担っています。非常に高度なエンジニアリング技術を強みとしており、NTTデータグループでもユニークな位置付けの存在です。ここでいう基盤とは、世の中に数多くあるITサービスを支えるネットワーク、サーバー、セキュリティ、クラウドなどを指します。こうした基盤領域を主に、AIやビッグデータなど先端技術を活用しながら、お客様の事業や社会のサービスインフラを支えています。社員は2022年に1000名を超え、その多くが技術者です。売上高は子会社との連結で700億円ほどになります。
マネジメント軸に加え技術力や専門性を評価することで、社員がキャリアのオーナーシップを持てるNTTデータ先端技術の「2次元評価フレーム」
――今回受賞された「新たな人事給与制度」ですが、2次元フィールドでの人事評価フレームを導入されたきっかけは何だったのでしょうか。

鈴木氏:本格的に検討し始めたのは2019年からです。会社の規模が1000人に向けて大きくなっている時期でした。当社はもともと技術力が高く、中でも特定の技術領域や工程についてはすでに非常に高い専門性を発揮していました。しかし、お客様からいただく期待の高度化、多様化により当社が担うべき技術領域や工程も拡大、変化していました。さらに、NTTデータグループのプロジェクトにおいては、当社に基盤領域全体をリードして欲しいとの期待も高まっていました。つまり、技術力をさらに伸ばし拡大しながら、マネジメント力も高めていく必要があったのです。一方で、当時の評価制度を振り返ると、従来の他の企業と同様に役職が上がれば給与も上がる制度でした。技術力の高い社員を評価するには課長や部長といったマネジメントの役職に就くことが必要だったのです。このままでは技術力や専門性に見合った処遇を行うことができず、モチベーション低下や人材流出の恐れもありました。そこで、マネジメント力だけでなく技術力や専門性も評価する仕組みが必要だと考え、制度の変革に着手したのです。


この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。
続きは記事をダウンロードしてご覧ください。

●キャリアを2次元空間に広げ、社員がその中を自由に選択・移動できるフレームを設計
●新制度浸透のための工夫、そして「専門家委員会」の存在
●採用・定着・活躍、そして育成文化の醸成にも大きく貢献
●「働きやすさ」と「やりがい」の施策を通じて「働きがい」を実現し、社員のキャリアと事業の成長をつなげていきたい



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