これまでうつ病について説明してきましたが、精神疾患というのは様々な診断名が存在し、特性も人それぞれです。今回はうつ病以外の精神疾患について説明していきたいと思います。
うつ病以外の精神疾患の特徴
 これまでうつ病について説明してきましたが、精神疾患というのは様々な診断名が存在し、特性も人それぞれです。今回はうつ病以外の精神疾患について説明していきたいと思います。

気分障害《双極性障害・気分変調障害》

 うつ病は気分が沈んだ状態である「うつ状態」だけが見られる病気ですが、双極性障害の場合、気分が高揚し愉快爽快な気分で意欲の亢進する「躁状態」も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気です。
 躁状態は程度によって分類され、入院が必要になるほどの激しい状態を「躁状態」といい、明らかに気分が高揚していて普段より調子がよく仕事もはかどるなど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の軽い躁状態を「軽躁状態」といいます。
 主治医との相談の上で正しい服薬と、生活リズムを整えることで症状を抑えることは可能とされています。
 気分変調障害はほぼ1日中持続する抑うつ気分が長期間続く慢性疾患です。この病気の特徴は、社会や家庭への不適応感や罪責感、さまざまな刺激への過敏性、人や社会への怒り、社会からのひきこもり、興味の喪失、疲れやすさや活力の減退、生産性の欠如です。
 うつ病と似たような症状ではありますが、抑うつ気分が軽いものの長い経過をたどるということで区別ができます。そのためうつ病から気分変調障害に診断名が変わるというケースもあります。

不安障害《適応障害・パニック障害》

 適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとって辛く耐えがたく感じられ、そのために精神症状、身体症状、また行動面に症状が現れる心の病気です。症状として、憂うつな気分、不安感、意欲や集中力の低下、イライラ感等があげられます。うつ病と似た症状も見られますが、ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると症状は次第に改善する点が異なります。
 パニック障害は、突然理由もなく動悸やめまい、発汗、息苦しさ、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ます。このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強く、自分ではコントロールできないと感じます。パニック障害では薬による治療とあわせて、苦手なことに少しずつ慣れていく心理療法が行われます。無理をせず、自分のペースで取り組むことが大切です。周囲もゆっくりと見守りましょう。

発達障害《自閉症スペクトラム障害・ADHD(注意欠如・多動性障害)》

 新たなアメリカ精神医学会の分類であるDSM-5で取り上げられた病名です。従来の診断基準(DSM-4TR)のカテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。典型的な症状としては、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れます。本人の特性をしっかりと理解してあげることが重要です。
 ADHDとは、発達年齢に見合わない多動衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3~7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。大人になってからも衝動的な行動を起こしてしまう、または忘れ物が多いなどもこの病気の一つと言えるでしょう。

 簡単に一例を挙げさせていただきましたが、その他にも診断名はあります。そして精神疾患は診断名がたとえ同じであっても症状というのは人によって変わってきます。そのため処方される薬も人によって変わってきますし、安定して働いてもらうために職場が配慮すべき内容も一人一人に合わせていく必要が出てきます。
 その人の特性を踏まえた上で配慮し働いてもらうと、健常者の方よりも能力を発揮するということも多いのが精神疾患の方の特徴かと思われます。職場では一人一人について的確にアプローチしていくのが大変になってくるかもしれませんので、外部の専門機関と相談してみてはいかがでしょうか。
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