自分の思うようにいくことはなかなかない。むしろ、上手くいかなくても当たり前だというくらいのスタンスで臨んだほうが、自分の才能やセンスを発揮しやすくなる。それが、一橋ビジネススクール特任教授、楠木建氏が提唱する「絶対悲観主義」だ。氏は、一人ひとりが、成功への呪縛から解き放たれ、仕事を「好き」になれる組織が人的資本経営を実現していけるとも説く。
「絶対悲観主義」が人的資本や個人の能力を引き出す一つのカギとなる
楠木 建 氏
講師:

一橋ビジネススクール 特任教授 楠木 建 氏

一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。企業が持続的な競争優位を構築する論理について研究。 大学院での講義科目はStrategy。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。 一橋大学商学部助教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授などを経て、2010年から現職。 著書として『逆・タイムマシン経営論』(20年、日経BP、杉浦泰との共著)、『「好き嫌い」と経営』(14年、東洋経済新報社)、 『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(10年、東洋経済新報社)などがある。
一橋ビジネススクール

商売のゴールは「長期利益の獲得」

今日は僕なりの「人的資本経営」に対する考えをお話しします。僕は競争戦略の分野で仕事をしており、まずは経営者の視点から人的資本経営とどう向き合うべきかということで『逆・タイムマシン経営論』を出版しました。ソフトバンクの孫正義さんが、「タイムマシン経営」を謳っていますが、僕が考えたのは、この「タイムマシン経営」の論理を反転させたらどうなるか。その結果、気付いたのが「同時代性の罠」でした。旬の言説ほど、同時代のストレオタイプ的なノイズが強く入り込み、受け手にバイアスを掛けてしまい、意思決定における錯誤を引き起こしていたのです。

この「同時代性の罠」を回避するには、当時のメディアの言説を振り返るのが良いです。なぜなら、時間の経過でしっかりと「デトックス」され、本質的な論理を考えさせられるからです。「同時代性の罠」の一つに「激動期トラップ」があります。それこそ、何かが起きると「今こそ激動期!」「戦後最大の危機」というフレーズを口にします。その理由は、人間社会だからというのが僕の答えです。安定はあり得ません。
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