今年は例年になく、初任給アップのニュースが数多く飛び交っています。新卒採用が過熱しており、優秀な人材獲得競争の中で他社、あるいは他業界に後れを取らないようにという思惑もあるのでしょうが、昨年からのエネルギー、輸入品価格の高騰による物価高に対して、従業員の生活を少しでも支援するという側面もあります。また、近年、企業は収益を従業員に還元することなく、その多くを内部留保に回してきたことに対する批判をかわすという狙いも否定できません。
大企業は6割が「2023年1月」までに選考開始
さて今回は、前回に引き続き、HR総研が人事採用担当者を対象に2022年11月28日~12月9日に実施した「2023年&2024年新卒採用動向調査」の結果と、HR総研が就活クチコミサイト「ONE CAREER」を運営する株式会社ワンキャリアと共同で2024年卒学生を対象に、2022年12月7~13日に実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」の結果も併せて見ていきます。まずは、「2024年卒採用の選考面接開始(予定)時期」です。全体では、「2023年3月」が18%で最も多く、次いで「2023年4月」14%、「2023年1月」と「20223年7月以降」が11%で続きます[図表1]。驚くべきは、「2022年6月以前」が9%と1割近くあり、「2022年中」(「2022年6月以前」~「12月」の合計、以下同じ)に開始した企業が3割もあります。
301~1000名以下の中堅企業では、大企業より1カ月程度遅れて「2022年11月」から増え始め、「2023年3月」が最多の21%、次いで「2022年6月以前」と「2023年1月」、「2023年5月」がいずれも12%で続きます。「2022年中」に面接を開始した割合は30%で、全体と同じ割合になります。一方、300名以下の中小企業はやや様相が異なります。面接開始時期として最も多いのは「2023年7月以降」21%で、次いで「2023年3月」18%、「2023年4月」17%が続きます。「2022年中」に面接を開始した割合は23%と最も低いものの、「2022年6月以前」と「2022年7月」の超早期に開始した割合は合わせて17%で、他の企業規模よりも高くなっています(大企業5%、中堅企業14%)。その一方、「2023年7月以降」だけでなく、説明会解禁日である「2023年3月1日」以降に開始する割合が65%(大企業は36%)となるなど、超早期との両極化が進んでいるようです。
多面的な評価を試みる大企業
続いて、「2024年卒採用で実施する面接の形式」を聞いたところ、全体では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が36%で最も多く、「対面形式のみで実施」の19%と合わせた「対面形式主軸派」が55%と過半数となっています[図表2]。中堅企業では、「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」だけでも53%と過半数を占め、大企業以上に「オンライン形式主軸派」のほうが多くなっています。ただ中小企業は、「対面形式主軸派」が68%と7割近くを占め、他の企業規模とは全く異なる様相を示しています。
「2024年卒採用で実施する面接の形態」では、当然のことながら大半の企業が「個人面接」は実施しているものの、比較的実施率が高いだろうと思われた「グループ面接」については中小企業での実施率が1割にも満たないなど、全体でも2割を下回り、それほど高くないことが分かりました[図表3]。
これに対して大企業では、「グループ面接」(31%)だけでなく、「グループディスカッション」(26%)、「グループワーク」(18%)、「プレゼン面接」(15%)、「技術・専門面接」(13%)、「ディベート」(10%)と、実施率が1割を超える面接形態が多くあり、人材の見極めにいろいろな面接形態を組み合わせて、多面的に応募者を評価しようとする姿勢がうかがえます。