第7回 HRテクノロジー大賞『ラーニング部門優秀賞』
株式会社電通コーポレートワン
電通「人財の見える化」プロジェクト
~人財を個性と能力と働き方の視点で分析、従業員の生涯価値向上と事業拡大をかなえる人財情報基盤整備へ~
事業変革をリードできる社員を増やすためにも社員の「成長の可視化」が急務と捉え、パフォーマンスと自律的な成長意欲レベルを掛け合わせて社員を9つにセグメントし、働き方、スキル保有状況やエンゲージメントなど多面的なデータでセグメントごとの特徴を分析。セグメントごとに課題を抽出し、社員一人ひとりが自分のキャリアと向き合う様々な施策を実施することで、学びの時間が増加したと実感する社員やキャリア自律意識を持つ社員が8割を超えるなどの成果につながったことが高く評価されました。プロフィール
清水 真哉 氏
株式会社電通コーポレートワン
1994年株式会社電通入社(新卒)後、約25年アクティベーションプランニング、ブランドコンサルティング、ビジネス開発の事業系業務を経験後、2018年に国内グループ会社の人事領域支援業務(国内グループ人事部)。グループ横断での労務・労働環境づくり・コロナなど安全衛生対策・人財育成などの業務に従事。2022年1月の電通コーポレートワン発足とともに現職に就任。
執行役員
松澤 美穂 氏
株式会社電通コーポレートワン
1997年株式会社電通に入社、マーケティング・ソリューション領域で、統合コミュニケーションプランニングや新商品開発、ブランディング、コーポレートコミュニケーションなど、戦略立案から施策実施までトータルな視点を持ったプランナーとして20年間活躍。主に、化粧品や医薬品、トイレタリー分野のクライアントを担当し、消費者の心と行動を動かすプランニングに注力。並行して、社のメソッド開発や新市場開拓プロジェクトにも携わる。2019年よりその経験とマーケティング視点を生かし、人事部門で社員の育成・成長支援領域におけるHRデータを活用した戦略立案と課題解決のための具体策のプロデューサーとして従事。
人事センター HRマネジメント室 キャリアデザイン戦略部 チーフ・プランニング・ディレクター
小林 洋子 氏
株式会社電通コーポレートワン
2006年株式会社電通に入社、営業部門に配属。ファッション、飲料、エンタメ業界といった様々な業界のクライアントを担当し、CR、メディア、PR、プロモーションなど広範囲で多様なビジネスプロデュース業務を推進。2017年より人事部門にて採用、新入社員育成を担当。現在は、社員の成長支援領域の業務に従事。
人事センター HRマネジメント室 キャリアデザイン戦略部 人財の見える化プロジェクト・プロデューサー
「人財の見える化」プロジェクトに取り組んだ背景とは
――まずは、電通グループにおける貴社の位置づけについて教えていただけますでしょうか。清水氏:当社は2022年1月、(株)電通のコーポレート領域部署、人財派遣やプロパティ管理を手掛ける(株)電通ワークス、給与や経理などのフルフィルメント業務を担う(株)電通マネジメントサービスが合併して設立されました。電通ジャパンネットワーク各社のコーポレート機能を一元的に集約し業務の効率化を図るとともに、領域専門家を集約・育成することでコーポレート業務の高度化を推進しています。
――改めて、本取り組みである「人財の見える化プロジェクト」を始めるにあたってのきっかけや背景について教えてください。
清水氏:市場環境の変化に伴い、当グループでも多方面での事業変革を加速しています。人財の働き方意識も変化する中、こうした環境下で、変革をリードできる社員を増やしていくために、人財の成長の可視化は急務でした。中でも業務領域が広い(株)電通では従来から今回のメンバーを中心に人財データの分析を進めていました。
松澤氏:電通の最大の資本であり財産であるのは「人」です。人が成長しないと会社や事業の成長もありません。それゆえ、変革をけん引できる人財の特性や成長要因を自社でしっかりと把握しないといけないということで、HRデータの分析に着手してきました。
――「人財の見える化プロジェクト」の概要についても教えていただけますでしょうか。
小林氏:社内には、これまで行ってきた評価や定期的な従業員調査など、様々なHRデータが存在していましたので、それらを連携させながら情報を一元化し、独自のデータベースを構築しました。
「人財の見える化」を進めていくうえでのわかりやすい例は、社員を9つにセグメントしたことです(図1)。具体的には自律的な成長意欲を横軸として、3つに分け、縦軸は仕事におけるパフォーマンスとして、こちらも3つに分けました。この2つを掛け合わせて、「属性」や「働き方」、「エンゲージメント」などの観点でそれぞれの特徴を深く分析するとともに、課題を抽出しセグメントに応じた施策を開発しました。
▼図1
松澤氏:はい。全社員は5000人以上の規模になってしまい、それだけの人数を一律に捉えることは難しいです。しかも、それぞれが持っている価値観も働き方も、これだけ多様化している中で、一律に捉えていてはそれぞれに適した施策を提供することはできないと考えています。ある程度のまとまりで社員を見るには、どういう見方が良いかは、かなり試行錯誤しました。
「人財の見える化」の目的の一つは、社員一人ひとりが自律的に成長しながら、どうしたら自分の生涯価値を上げていけるかを考えられる人財にすること。そして、その成長が組織の成長に繋がっているか。さらには、事業にインパクトを与えられるかです。この3つの軸がきちんとWin-Win-Winで回るかどうかというところが重要なポイントであると思った時に、社員と組織の状態、それが事業の成長に繋がっているかを見ていく物差しが必要になると考え、「9ボックス」という形で規定しました。
清水氏:こうした人事視点での取り組みは事業部門に効果的に繋がっていないと意味がありません。9ボックスは一つの「物差し」ですが、これが必要なのも事業部門側と現状を共有する際に前提とするためです。事業部門を尊重しながら様々な施策を導入していくことにこそ、大きな意味があると思っています。
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