人的資本経営の実現が重要視される今日、企業は優秀な人材の確保と育成に、より一層注力しようとしている。だが、人材市場は激戦を極めており、思惑通りに採用活動を進められている企業は少ないと言って良い。さらに、採用を難しくさせているのが新型コロナウイルスの感染拡大によるオンライン面接の加速・定着だ。もともと面接はブラックボックス化しがちな一面があったが、さらに面接官や学生がオンラインでのコミュニケーションに慣れていないこともあって、意思疎通が円滑に進まない場面が多々見られる。こうした中、AIを活用して面接官の面接スキルを定量的・定性的観点で可視化し、面接精度向上のPDCAを回す仕組みを展開しているのが、株式会社大塚商会だ。どのような経緯で取り組みをスタートさせ、どんな実績・成果がもたらされたのか。同社 人材開発部 人事採用課 課長代理 鈴木 雅美氏にお話を伺った。

第7回 HRテクノロジー大賞『採用部門優秀賞』

株式会社大塚商会

Beyond 構造化面接!AIを活用して「面接を定量化」
~科学的アプローチをもとにした面接精度向上プロジェクト~

ブラックボックス化しがちな採用面接の現場において、株式会社ZENKIGENが提供する採用面接AIサービスを活用して「面接の定量化」を実現。オンライン面接時の録画データを用いて、表情や振る舞い、発話比率、発話ワードの頻度等を可視化し分析するとともに、神戸大学服部泰宏准教授との共同研究にて面接官インタビューを実施し、熟練面接官の「実践知」を可視化するなど、面接精度向上のためのPDCAを回す仕組みを構築したことが高く評価されました。

プロフィール

  • 鈴木 雅美 氏

    鈴木 雅美 氏

    株式会社大塚商会
    人材開発部 人事採用課 課長代理

    2006年大塚商会へ中途入社。人材開発部に所属し、採用・教育に携わる。部内の様々な業務を経験し、2回の産休育休を経て、現在は新卒採用全体を統括。今回受賞した面接動画分析プロジェクトをメインで担当する。
AIを活用して面接官のスキルを可視化した「面接精度向上プロジェクト」

データ活用によって確立した面接の共通認識やお手本

――まずは、「科学的アプローチをもとにした面接精度向上プロジェクト」がスタートしたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

新型コロナウイルスの影響でオンライン面接が一気に加速しました。弊社でも最初はZoomを使っていたのですが、URLを発行して、面接官と学生さんにそれぞれ連絡するという作業に予想以上に手間を取られました。採用システムを一新するという動きのなかで、生産性の観点からも、オンライン面接を包括したシステム作りをしようということで、株式会社ZENKIGENが提供するサービスを導入しました。スムーズにオンライン面接ができるという当初の要望に、面接動画の録画ができるというメリットが付いてきました。オンライン面接を録画できれば、当然データも蓄積されていきます。そのデータは有効活用できるのではというところから、プロジェクトが始まりました。

オンライン面接の録画データ活用として、データが蓄積される以前にまず取り組めることは何だろうと考え、初年度は面接官がどのように面接をしているのか分析することから始めました。これまでブラックボックス化されていた面接を様々な角度から分析し、面接力の底上げを図りたいと考えたからです。

――プロジェクトはいつ頃から始まったのでしょうか。

2022卒の採用から使えるシステムを作ろうとしていたので、各社から提案を受け検討を重ねてZENKIGEN社に決めました。2022卒の選考から面接の録画を始め、その年の年末には面接官にデータ分析結果をフィードバック、2023卒の面接に繋げていきました。

――改めて、今回のプロジェクトに関する概要について教えてください。

面接で行われていることをデータとして出すことで、当社における面接の全体図を見るというのがプロジェクトの概要です。データを全体で見ていくと、当社の面接傾向を大まかに捉えることができます。面接官の発話量は適切か、承諾してくれた学生さんはどんな面接を経験しているのか、辞退している学生さんに面接官がどんな言葉を発しているのか、などが見えてくると改善点も明確になります。そこから面接に関する共通認識を確立していきました。また、面接官個人のデータも分析しています。仕事として面接を行ってもらう以上は、結果を出せる業務にしたいということも考えていましたね。
AIを活用して面接官のスキルを可視化した「面接精度向上プロジェクト」

この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。
続きは記事をダウンロードしてご覧ください。

●面接官のスキルを定量・定性的な観点から可視化していく
●データを分析し、面接官のアクション改善に活かすPDCAを構築
●プロジェクトがもたらした「現場面接官との相互理解」や「積極的な面接の改善」



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