「感受性が強い人」は職場の雰囲気をつくるキーパーソンになり得る
まず『広辞苑(第7版)』では「感受性」を以下のように説明しています。(1)外界の印象を受けいれる能力。物を感じとる力。感性。
(2)生物体において、環境からの刺激、特に薬剤や病原体により感覚または反応を誘発され得る性質。受容性。
今回ご紹介する「感受性」は、上記の(1)の意味です。
「感受性が強いかどうか」については、明確な境界線があるわけではありません。しかし、一般的に“感受性が強い人”というと、どこか内気な印象があったり、物事を深く考えすぎてしまったりするような、とても繊細な人がイメージされやすいでしょう。
アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士は、“とても感受性が強い人”を「HSP(Highly Sensitive Person)」と提唱し、「約5人に1人がそのような資質を持っている」としています。例えば、「暴力的な映像が苦手」、「大きな声を出されるのが苦手」といった人がいれば、それは“とても感受性が強い人”かもしれません。職場の人間関係の場合を考えてみると、例えば「周りの目を気にする傾向がある」、「慎重に言葉を選んでいる」といった人にも、同じようなことが言えるかもしれません。
基本的に「HSP」は少数派です。敏感に物を感じ取ることができるため、生きづらさを感じたり、ストレスが溜まりやすかったりする傾向にあると言われています。ただし、職場などある程度の人数が集まる場であれば、その中に1人は「感受性が強い人」がいる可能性があり、当人がその特性を活かすことで、『誰もが働きやすい環境』をつくる職場のキーパーソンとなりえるのです。
「感受性が強い人」の特徴を知れば、“誰もが働きやすい職場環境”を作ることができる
それでは、実際に「感受性が強い人」の特徴をご紹介します。ただし、感受性の強さの方向性は人それぞれですので、必ずしもすべてがあてはまるとは限りません。その人の特性を知る上での“1つの手掛かり”として参考にしてください。特徴1.「他人のつらさ」を「自分のつらさ」のように感じてしまう
指導する相手が繊細である場合、厳しすぎる指導を避けたり、物事をはっきり言うことを避けたりといったことは、みなさんの経験の中でもあるかもしれません。しかし「感受性が強い人」の中には、“他人のつらさ”を“自分のつらさ”のように感じる人もいます。例えば、上司が厳しい口調で1人の部下を叱った場合、その様子を見るだけで、指導を受けた本人よりも「つらい」と感じてしまうのです。上司としては、感受性が強い部下の気持ちを汲んで、あえて他の1人の部下を叱ったつもりでも、それが逆効果になる場合もありえます。
特徴2.「空気を読むこと」ができる
日々の忙しい仕事の中で、「感受性が強い人」に対して常に細かい気配りを続けるのも、なかなか難しいものです。また、「感受性が強い人」に合わせて、指導する側も感受性を強くすると、互いに気を遣い過ぎることになりかねません。仕事をする上で大事なことは、「互いに気を遣いすぎること」ではなく「互いに信頼すること」です。実は、感受性が強い人は「空気を読むこと」ができる場合が多いです。そのため、「空気を読むこと」の過度なストレスを軽減できれば、類まれなる集中力を発揮し、効率的に仕事を遂行することができます。また、周りの空気を読み、「どのタイミングで動けば仕事が上手くいくか」を感じ取ることができるため、「信頼していること」を伝えた上で仕事を任せると、大きな成果につながることもあります。
一方で、上司が細かい指示を出し過ぎたり、上司の負の感情を頻繁に感じ取ったりすると、「空気を読むこと」が“弱み”になり、仕事が滞ってしまう場合もあります。
感受性が強い人が「空気を読むこと」を“強み”にし、その能力を最大限に発揮することができれば、職場の生産性が大きく向上していきます。
特徴3.「自らが働きやすい環境」=「誰もが働きやすい環境」と感じることも
「感受性が強い人」は、「共感力が強い人」でもあります。そのため、特徴1で示した「『他人のつらさ』を『自分のつらさ』のように感じる」という特徴と同様に、「他人の幸せ」を「自分の幸せ」のように感じる傾向もあります。
つまり、「自らが働きやすい環境」を実現するために、「他人(誰も)が働きやすい環境」を目指す傾向があるということです。職場の人たち一人ひとりの細かい言動を敏感に察知し、さりげなく必要なフォローをすることができる能力を秘めているため、職場内の「人」と「人」とをつなげる存在になり得るのです。
もし人間関係が上手くいっている部署があれば、その部署には「感受性が強い人」がいる可能性があります。そのような人たちの日常の言動を探っていけば、「誰もが働きやすい職場」を他の部署にも広げることができる、大きなヒントが見つかるかもしれません。
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