コロナ禍の出口が見えない中、オンラインを活用した採用手法が定着し、それにあわせて企業が抱える採用活動の課題も少しずつ変化し始めています。企業の採用計画や手法は、現状どのようになっているのでしょうか。また、学生の志向やニーズにも変化は起こっているのでしょうか。そこで今回は、HR総研の独自調査をもとに、オンライン主流の23卒採用を振り返りつつ、24卒採用を展望。新卒採用調査の設計・分析に携わったHR総研の2人の研究員が解説いたします。

講師

  • 松岡

    松岡 仁

    ProFuture株式会社 取締役 / HR総研 主席研究員

    1985年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に連載中。



  • 久木田

    久木田 亮子

    ProFuture株式会社 HRサポート部 / HR総研 主任研究員

    2009年建設系企業に入社。研究開発および設計職に従事。2015年以降、シンクタンクにて地方創生に関する幅広い分野で調査研究を行う。2019年にHR総研(ProFuture株式会社)主任研究員に着任。人事関連分野に関する幅広い調査・分析を行う。新卒採用においては就活学生を対象とした調査の設計から分析も担当する。

オンライン主流の23卒採用を振り返り、24卒採用を展望する

【2023卒採用動向】(解説:久木田亮子)
採用計画における文系・理系の採用数は前年並みが最多

まず初めに、2023卒の採用動向から見てまいります(図1)。採用計画における文系・理系の採用数の前年比較を見てみますと、文系・理系ともに「前年並み」が最多となっており、またすべての企業規模で理系の採用数を「増やす」割合が文系より多く、大企業で26%、中堅企業で32%、中小企業で18%となっています。一方、文系の「減らす/採用なし」の割合は理系より多く、特に中堅企業で19%、中小企業で18%となっております。

<図1>採用計画における文系・理系の採用数の前年比較

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続いて、23卒新卒採用で重視した施策について見てみますと、大企業では「就職ナビ」と「自社採用HP」が最多で48%となっており、またいずれの企業規模でも「就職ナビ主催の合同企業セミナー」より「自社セミナー・説明会」を挙げる割合が高くなっていました。そして大企業では「逆求人サイト」が中堅・中小より高く、19%となっています。

続いて、過去数年におけるターゲット層の変化について質問したところ(図2)、ターゲット層が「(やや)変化してきている」とする割合は、いずれの企業規模でも増加傾向にありました。 大企業では48%と半数近く、中堅企業でも36%、中小企業でも34%となっており、ここ数年で最も高い割合となっています。また企業変革に伴う新卒採用ターゲット層の変化についても聞いたところ、「DX推進」と「企業変革の推進」をしている企業群と全体を比較すると、いずれの企業群も、全体よりターゲット層が「(やや)変化してきている」とする割合が高く、それぞれ49%、50%とほぼ半数になっています。

<図2>新卒採用 過去数年におけるターゲット層の変化

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では新卒採用ターゲット層の変化の要因は何だったのでしょうか。
変化の要因としては、大企業では「事業変革に伴う人材要件の変更」が最多で55%となっており、次いで 「入社後のミスマッチ防止対策」となりました。中堅・中小企業では「入社後のミスマッチ防止対策」が最多で、それぞれ50%、36%となっています。
またターゲット層を採用するために最も効果的だった施策についても聞いたところ、「インターンシップの活用」が最多で、大企業では「キャリアセンター訪問」、「逆求人サイト」、「リファラル 採用」が同率2位となっており、ダイレクトソーシングの活用に効果を感じていることがうかがえました。一方、中堅企業では「キャリアセンター訪問」、「大学主催の学内セミナー」など、大学との連携強化に効果を感じていることがうかがえます。

インターンシップの印象が入社志望度に強く影響

ここからはインターンシップの実施動向を見てまいります。インターンシップの実施率は、大企業では71%、中堅企業では62%、中小企業では38%となっており、22卒時と同程度の実施率となっています。次に実施月を見てみますと(図3)、大企業では「2021年8,9月」が最多で54%、中堅企業では「2021年9月」が最多で50%、中小企業では「2021年8月」が最多で42%と、規模を問わず8月、9月に実施する企業が多いことが分かりました。また大企業では「2021年10,11月」においても3割程度以上で実施され、「2021年12月」の実施率は「2022年1月」を上回りました。 かつては、1月、2月が最多でしたが、採用活動の早期化によりインターンシップも前倒しになっていることが推測されます。

<図3>インターンシップの実施月

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続いて開催形式を見てみますと、いずれの企業規模でも「すべてオンライン形式で実施」が最多となっており、大企業では75%、中堅企業では59%、中小企業では39%となっています。一方、「すべて対面形式で実施」の割合は3割未満にとどまりました。
次に、インターンシップのプログラム内容を見てみますと、対面型では「社員との交流」が50%で最も多く、オンライン型では「業界・事業紹介」が84%で最多となりました。体験や現場見学などの臨場感あるプログラムは、オンライン型では少ない傾向となっています。

では、学生側はインターンシップにどのような印象を持っているのでしょうか。
理系学生が「参加して最も良かったインターンシップ」として挙げたのは「対面型での実務体験」が57%で最も多く、次いで「対面型でのケースワーク・グループワーク」(30%)となっています。 オンライン型への参加率が圧倒的に多いものの、「対面型」プログラムに参加した学生は、対面型のインターンシップに良い印象を抱いているようです。また、インターンシップの印象が良かった会社への「入社志望度の高まり」について聞いたところ、「高まった」が9割以上にのぼり、インターンシップの印象が「入社志望度への高まり」にも強く影響していることが分かりました。

続いて、学生がインターンシップに参加した社数を見てみますと(図4)、対面型では半数が「0社」としており、「2社」以上に参加している学生は2~3割程度にとどまりました。一方、オンライン型では、8割以上が「1社」以上に参加し、過半数が「4社以上」に参加。学生の参加率は、対面型とオンライン型で顕著に異なることが分かりました。

<図4>インターンシップに参加した社数(参加型式別)

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次に、参加した時期を見てみますと、オンライン型では「2021年8月」が58%で最も多く、「2021年8月~2022年2月」でも少なくとも4割程度以上をキープしています。一方、対面型では多くとも「2021年8~9月、12月」の3割程度にとどまっており、オンライン型との差異が顕著となっています。

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