今回、企業の人材アセスメント・人材育成などに多くの知見を持つ株式会社マネジメントサービスセンター取締役 福田 俊夫氏、シニアコンサルタント宮島 寛之氏にインタビューを実施。ビジネス環境の変化が採用にどのような影響を及ぼしているのか、企業はどのように採用、人材戦略・育成を行っていくべきかなどを詳しく語っていただいた。(以下敬称略)
プロフィール
福田 俊夫 氏
クレアモント大学院大学 ピーター・ドラッカースクール オブ マネジメント 経営学修士課程修了(M.B.A)。外資系コンサルティング、外資系半導体企業のHRBPを経て現職。
株式会社マネジメントサービスセンター 取締役
26年余のリーダーシップ開発、組織開発、サクセッション マネジメントなどコンサルティング経験を有する。現在、DDIのソリューションを主に扱うグローバルサービス部、およびマーケティングの責任者として日系、外資系企業にコンサルテーションを展開。宮島 寛之 氏
早稲田大学第一文学部卒。前職の大手人材サービス会社では、転職支援業務に従事。
株式会社マネジメントサービスセンター シニアコンサルタント
マネジメントサービスセンター入社後は、人事戦略立案のサポート、ヒューマンアセスメントによる能力診断、リーダーシップ開発、採用活動支援など人材領域における幅広いコンサルティング活動に力を注いでいる。クライアントに寄り添いつつも、組織に内在する本質的な課題に対するアドバイスに定評がある。
会社と個人の関係性が変化、個のキャリアを重視する傾向が強まる
寺澤:採用を考えるにあたってビジネスの環境変化を抜きには語れません。企業を取り巻くビジネス環境の変化について、どのように捉えているかお聞かせください。宮島:今のビジネス環境の大きな特徴の一つとして、先行きの不透明さが挙げられます。10年後、何が正解だったかは誰にもわからないため、スピード感を持って物事を進め、短いスパンでチャレンジと検証を繰り返すことが欠かせません。しかし、日本企業はどちらかと言えば石橋を叩く時間を長く取る慎重なビジネススタイルなので、変化への対応という点について苦戦を強いられていることが少なくないようです。
宮島:働く人一人ひとりが自らのキャリアのあり方を非常に重視するようになってきています。これまでは、自分自身のキャリアが大切だと頭ではわかっていても、あまり強くは主張せず、会社側の指示に従うことが当たり前でした。
しかし、コロナによって非連続的な日常に変わり、会社に所属していれば大丈夫という時代ではないことがいよいよ明確になりました。もはや個人は会社に自身のキャリアを依存してはいけないという意識になってきています。両者の雇用における関係は大きく変わってきているのです。
寺澤:会社と個人の関係性が変化したことで、働く人の就職、転職への意識はどのように変わったでしょうか。
宮島:仕事を通じてどんな能力が身につくかを企業選択の理由として挙げているケースが多くなっています。先行きが不透明だからこそ、自分のキャリアは自分で作っていかなければという自覚が芽生えています。
採用面で現場の巻き込みが不十分なため、ミスマッチや早期離職の問題が引き起こされる
寺澤:採用する側としてはどのような変化が起こっているでしょうか。宮島:ミスマッチが起こりやすくなり、早期離職の問題が起こっています。それも本来は辞めてほしくない人、能力が高く活躍の見込めそうな人から辞めてしまう。この課題の大きな要因として、採用面で現場の巻き込みが行われていないことが挙げられます。その結果、求められる能力や人物面と、現場の期待との間に齟齬を起こしているのです。
福田:採用は人事だけが行うものではない。そう捉えるのが大事です。ところが、現状では現場のビジネス部門が採用プロセスの上流工程と言える部分いわゆるビジネスサイドの現場が求める人材要件に入り込んでいないため、求める能力の設定が非常にあいまいです。このため、人事が選ぶ人材は現場にマッチしないという齟齬が起こっています。
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