「コンフリクト」とは?
本シリーズでは、「コンフリクトとは、関わっている人同士の懸念事項(気にかける事柄や事態)が、同じでない状況のこと」(by Kenneth W. Thomas)と定義する。われわれ人間は社会的動物なので、日々他人との関わりの中で影響しあい成長していく。その関わり合いの中で常に何らかのコンフリクトが生じる。コンフリクトと聞くと「対立・衝突・紛争」など、かなり強い否定的意味合いにとらえがちだが、上記の定義にもとづけば、人間間で日々どこにでもあることだとわかる。
ビジネスにおいては、立場によりメリットが異なり、価値観や感情といった内面的な対立もあり、業務に支障が出ることもある。だが、コンフリクトを乗り越えることができれば個人は成長し、チームはお互いへの理解が深まり強くなる可能性もある。日々生じるコンフリクトをマネジメントする力はビジネスパーソン、特にリーダーには必須だといえるだろう。
組織内のコンフリクトは成長の伸びしろ
昨今では、企業経営においても、日々変化が絶えないVUCA/DXに対応するため、組織内の仕事のやり方を常に変えていかなければならない。そこには必ず部署間のコンフリクトが発生する。従来の仕事のやり方を変える際には、お互いに必ず異なる懸念事項があり、それを無視することはできないからである。
だが、それを乗り越えれば外部環境に対応することができ、さらなる組織の成長が期待できる。すなわち、コンフリクトとは成長の伸びしろがそこにあることを意味し、決してネガティブな状態ではないというマインドセットが必要だ。
コンフリクトへの処し方の引き出しを増やすことは自己成長そのもの
次に個人の自己成長という観点からも、組織内で日々生じるコンフリクトにうまく対処していくスキルを持ち合わせていくことは不可欠だ。コンフリクトに直面すると、ストレスとなり、かなりのエネルギーを消耗していく。そこをいかにうまくマネージしていくかは、持続的に活力ある状態で成果創出していくうえで大切であることは言うまでもなかろう。ここでコンフリクトへの向き合い方がなぜ自己成長と関係してくるのか、もう少し補足したい。
人はその認知スタイルのタイプごとに、コンフリクトに対して、取りがちなパターンがあると言われる。たとえば、原理原則や論理に照らして結論づける機能が主の人の場合は、後述の競争モードをとりがち。一方、自分自身の価値観や相手への思いに照らして結論づける機能が主の人の場合は、後述の適応モードになりがちなどだ。
ただ、コンティンジェンシーリーダーシップ(条件適合理論:環境に適合した行動だけがリーダーシップ行動として効果を発揮するという考え方)と同じ考え方にたち、目的やそれを実現する上での制約要因や相手の懸念事項によって、選択すべきコンフリクトモードは本来変わってくるべきだ。状況に応じて複数のコンフリクトモードの引き出しから適切な行動を選択できるかが、自己成長そのものと言ってよい。
コンフリクトモードの5分類
では、コンフリクトへの対応の仕方にはどのようなものがあるのか、Kenneth W. Thomasは、アサーティブネスとコーポラティブネスの2軸によって、下図のように5つのモードに分類している。出典:”Introduction to Conflict Management: Improving Performance Using the TKI” Kenneth W. Thomas
・協働……相手を尊重しながら、自己主張もし、Win-winを目指すスタンス
・妥協……互いに要求水準を下げ、協力して課題解決を行うスタンス
・回避……その場で解決しようとはせず、対立にかかわろうとしないスタンス
・適応……相手に従い、自己主張をしないスタンス
では、ビジネスリーダーが失敗から学びながら、自らのコンフリクトモードをいかに状況に応じて変化させられるようになり自己成長を遂げてきたか、次回から実際のケースとして徳島正人(仮名)の20代~40代初めまでの経験をつうじて考えてみたい。
<参考文献>
・“Interpersonal Conflict” Hocker, Joyce L./Wilmot, William W.
・”Introduction to Conflict Management: Improving Performance Using the TKI” Kenneth W. Thomas
・“Using the TKI Assessment with the MBTI Instrument” Psychometrics 2018
・『MBTIへの招待』 R.R.ペアマン/S.C.アルブリットン(2002)
(執筆者:芹沢 宗一郎)
※本記事は『GLOBIS 知見録』に掲載された記事の転載です。
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