企業における「準シニア世代」は具体的にどの年代か?
これまで20代~40代の世代別に、世代が抱える課題やその生態について考察してきました。今回からは40代後半以上の世代について解説していきます。社内における「準シニア世代」とは、世間一般でいう「団塊ジュニア世代」のことです。本稿では、企業内における価値観や考え方の違いの実感から、50代後半以降の世代を「シニア世代」、40代後半~50代前半を「準シニア世代」と定義します。この世代は、企業の中で部長職などの上級管理職に就いている方も多いでしょう。まさしく、現在の日本企業を作り上げ、いまでも牽引している立場の方々です。
「準シニア世代」は1960年代後半~70年代に生まれました。ちょうど戦後の高度経済成長期の中で幼少期を過ごし、社会人になるまで育ちました。好景気で物質的にも恵まれたためか、「消費意欲が旺盛で、高級志向である」という点がこの世代の特徴です。物質的な豊かさを求めており、“収入の多さ”がやりがいを左右します。
また、この世代は第2次ベビーブーム生まれでもあり、激しい受験戦争を経験しています。当時は中学校の1学年が1,000人も居たような時代です。苛烈な受験戦争を勝ち抜いて、良い大学へ進学しようと努力した人も多いでしょう。社会人になるまではとにかく豊かな時代でしたが、社会人になった直後に「バブル崩壊」を迎え、「平成の大不況」に入ります。
準シニア世代の分かれ道は「価値観のアップデート」にあり
「準シニア世代」で大企業の部長職や役員などのポストに就いている方は、総じてとても優秀な方が多い印象です。厳しい受験戦争を超え、さらには不況という厳しい環境の中で出世競争を勝ち抜いてきたからです。タフな環境が人を育てるとはまさにその通りで、厳しい環境を生き抜いた方々には大きな迫力を感じます。また、豊かさと厳しさを両方経験されてきたからこそ、人間的な温かさを持っていらっしゃる方も多いのでしょう。自分自身が苦労してきたからこそ、若い世代には楽をさせてあげたい、そんな思いを持つ方もいます。一方で、準シニア世代の課題は「価値観のアップデート」です。
この世代が社会人を過ごしてきた時代は、「長時間労働があたりまえ、コミュニケーションは夜遅くまで働いた後に飲み会で」というようなライフスタイルを過ごす人も多かったのではないでしょうか。厳しい環境の中で競争を勝ち抜いてきたため、その「経験や価値観」を若手世代にも押し付けてしまう人もいます。さらには、今の若い世代が重視する「やりがい」や「働きがい」といった精神的な豊かさの概念を理解しづらいという特徴もあります。
そのため、仕事ではあまり部下に教えることは少なく、「自分で這い上がってよい収入を手にしろ」という考えの方も多いように感じます。準シニア世代は、自分自身のアイデンティティが過去の競争を勝ち抜いてきたというプライドに裏打ちされているため、なかなか現代社会の価値観や、変化する環境に対応できないという特徴も持ち合わせているのです。
“学びなおし”を成功に導くには、客観視した「振り返り」が重要
準シニア世代の価値観を変えるには、「学びなおし」が有効です。かつての日本特有の競争社会の考え方から、変化が激しく、SNSなどのネットワークでつながる現代の“共感型社会の価値観”へのアップデートが必要なのです。具体的には、まず自身が持つ過去から続く価値観を客観視して理解し、現代が「物質的豊かさよりも精神的豊かさを重視する社会になっていること」を学ぶ必要があります。もう一つのポイントに、準シニア世代は、バブル期の大量採用時代の入社であるため、これまで十分な社員教育を受けられていないという点があります。入社時のみ集団研修を受けたけれども、職場では十分なOJTを受けられず、自力で道を切り拓いてきたという方も多いように見受けます。そのためか、振り返る習慣を意識的に持っていない方もいます。「学びなおし」は、まず自分自身を振り返って客観視することから始めます。その上で現代社会に対応するのに“これまでの経験の中から何を残して、何をアップデートするのか”をまず見極めなければなりません。
競争を勝ち抜いてきた準シニア世代の方々はプライドも高く、そう簡単に価値観を変えられないのも事実でしょう。しかしながら、そのような方々は、学びなおして新たな価値観を得なければ、老後の生活が成り立たなくなる可能性に目を向けなければなりません。従来のような「老後」がなくなりつつある日本で、これからの人生後半もイキイキと生きていくには、現代社会を学ぶことが必要不可欠です。
ここで肝心なのは「準シニア世代の方々のアップデートは、会社のアップデート」でもあるという観点です。中間層の少ない日本の大企業では、彼らは重要な戦力で、会社のリーダーとして日々後進の指導にあたっています。つまり、準シニア世代の方々の考え方をアップデートしなければ、会社はこれからの時代、生き残っていけないということになります。日本企業は、準シニア世代の方々のアップデートを重要な組織戦略として位置づけるべきではないでしょうか。
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