新型コロナ感染拡大により、働き方が大きく変わってきている。デリバリーサービスに代表されるギグワーカー(インターネット経由で、企業や個人から仕事を単発で請け負う人)など、いわゆる「業務委託契約」が注目を集めているが、さまざまなシーンでトラブルも散見される。ここでは、「業務委託契約」の種類や注意すべきポイントを整理する。
「業務委託契約」でトラブルに発展するケースとは? 契約の種類や内容、注意すべきポイントを整理する

「業務委託契約」とは? ~「請負契約」と「委任(準委任)契約」の違い~

「業務委託契約」とは「何らかの業務を外部の企業や個人に頼むときに締結する契約」を指すが、その多くは民法に定める典型契約のうち「請負契約」あるいは「委任(準委任)契約」に該当する。以下、「請負契約」と「委任(準委任)契約」の主な内容を比較する。
請負契約と委任(準委任)契約の比較
「請負契約」は「仕事の完遂」を目的としているため、具体的な「成果物」や「タスク・プロジェクトの完遂」に対して報酬が発生する。

一方の「委任契約・準委任契約」については、「業務を行っていること」に対して報酬が発生する。「委託契約」は「法務的行為を伴う業務(弁護士、税理士、公認会計士など)」であるのに対して、「準委託契約」は「法務的行為を伴わない業務(コンサルタント、インストラクターなど)」といったように、法務的な行為が含まれるか否かで分かれるものとしている。

「労働契約」と「業務委託契約」は何が違う? 注意すべきポイントを探る

企業と労働者が雇用関係となる「労働契約」と、業務上の受発注という関係に限定される「業務委託契約」を比べると、発注者である企業が追う責任(解雇・残業代支払い・社会保険加入等)は明確に異なる。そのため、労働者を雇用せずにあえて「業務委託契約」を用いる、いわゆる「偽装請負(=請負契約と偽っているが、実質的には労働契約にあたる内容)」の問題が付きまとっているのも実状だ。

業務委託契約として適正に判断されるための、主な注意点をいくつかご紹介したい。

1)労働者性

「時給で報酬を支払っている」、「労働時間や就業場所、仕事の進め方等に自由な裁量がない」など、実態として業務委託が否定されて労働契約が認められた場合、たとえ業務委託契約書があっても「実質的労働者」と認定され、残業代の支払いや社会保険等の加入義務が発生する。

2)報酬(委託料)

働く側にとって、自身の裁量や創意工夫によって効率よく業務をこなせば、その分多くの報酬を得られることも「業務委託契約」の魅力のひとつである。「業務委託契約」では、発注者と受注者は対等の関係であるはずが、実態は発注側と受注側との関係性によって報酬(委託料)が不当に抑制されているケースがある。このような認識不足があると、「実質的には労働者であり、残業代の支払いが必要だ」と主張されることにもつながりかねない。

発注側・受注側とも「法令上の仕組み」をよく理解しよう

テレワークの普及や副業・兼業の奨励など「働き方の多様化」が進む中で、「業務委託契約」が増え、企業や働く人たちが直面する問題がまだ多く残されているのが現状だ。しかしながら、今後一層世の中の流れが自由で裁量のある働き方にシフトしていくのは間違いなく、発注側・受注側も法令上の制限や仕組みをよく理解したうえで、適切かつ有効的に「業務委託契約」を活用していくべきだろう。
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