グローバル化やダイバーシティなどを背景に、多様な人材の採用・教育・配置が必要になってきている。もはや、従来のような単一の人材管理ではなく、様々な人事情報を集約・分析していくことが求められているのだ。しかしながら、単純にテクノロジーを導入するだけでは、意味をなさない。活用する「目的」を明確にした上で取り入れてこそ、テクノロジーはその真価を発揮できる。第6回HRテクノロジー大賞で『大賞』を受賞したニトリホールディングスでは、まさに経営戦略と連動した人事戦略を策定し、明確な目的のもとでタレントマネジメントシステムの構築に取り組んでいる。その施策が、人材育成や配転、そして従業員一人ひとりの明確なキャリアプラン形成の実現に繋がっている。今回、株式会社ニトリホールディングス 理事/組織開発室 室長 永島 寛之氏に、テクノロジーに対するスタンスや、具体的な施策や成果、そして根底に流れる人材育成への想いについて伺った。

第6回 HRテクノロジー大賞『大賞』

株式会社ニトリホールディングス

「テクノロジー」と人事施策を融合し、個人の好奇心を刺激~個人の成長と組織の成長を繋ぐタレントマネジメントシステムの構築

人事情報の一元管理、個人の興味関心を分析し人選や人事配転への活用、人材プールを作成し最適な配転設計とともに、業務の見える化・人事情報の配信により明確なキャリアプランづくりをサポート。このような「テクノロジー」と「従来の多数精鋭主義を輩出する人事施策」を融合させ、個人の成⾧と組織の成⾧を繋ぐタレントマネジメントシステムの活用が、⾧期目線での配転計画や人材育成と明確なキャリアプラン形成の実現に繋がっている優れた取り組みであると、高く評価されました。

プロフィール

  • 永島 寛之 氏

    永島 寛之 氏

    株式会社ニトリホールディングス
    理事/組織開発室 室長

    1998年東レ入社。法人・海外営業に従事後、2007年にマーケティングマネジャーとしてソニーへ。ソニーではマイアミ駐在時に10 カ国を超える出身国が異なった部下を統括し、ダイバーシティやグローバル組織の運営に興味を抱く。2013年に米国で初出店を果たしたニトリへ入社。入社後は2年半の国内店舗勤務の中で店長まで経験し、2015年より採用責任者、2019年3月より人事責任者へ。「個の成長が企業の成長。そして、社会を変えていく力になる」という考えのもと、全従業員へのグロービス学び放題永年契約、IT パスポート取得義務化、タレントマネジメントシステム(Workday)の導入を矢継ぎ早に決め、テクノロジーを駆使した「多数精鋭教育」の実現に向けて陣頭指揮を執る。「越境好奇心」の育成が人事と教育のテーマ。
従業員の好奇心と仕事をマッチさせ、個と組織の成長を繋ぐニトリのタレントマネジメントシステムとは

従業員が5000名を超え、一人ひとりのキャリアや育成を詳細に把握するのが難しくなってきた

――まず、「個人の成長と組織の成長を繋ぐタレントマネジメントシステムの構築」に取り組まれた背景について教えていただけますでしょうか。

ニトリは、自分たちの姿を決して正しいとは思っていません。常に現状否定をして、大きく成長していこうと思っています。ロマンとビジョンを掲げ、未来課題を中心に据えて組織も個人も進歩を続けてきました。

そのような中、事業の拡大とともに従業員が5000名を超える規模となり、本部で全てを把握することが難しくなってきたのです。現場からも、「自分の仕事がどのように未来に繋がっていくのか見えてこない」、「やりたいことが分からない」という声が上がっていたり、評価は高くてもモチベーションが上がっていない従業員の姿が見えてきたりしていました。

また、ニトリは店舗を全国各地に構えており、従業員の3000名ほどは本部から離れた店舗で勤務しています。そうなると、リモートワークのようなもので、一人ひとりの従業員がどのような表情で働いているのか見えません。現場の従業員も「自分たちは本当に見てもらえているのか」と不安を感じてしまいます。

そこで、それぞれの従業員がどのように成長してきているのか、あるいは何を希望しているのかを情報集約し、それを教育や配転に活用していくことを目標に、2019年よりタレントマネジメントシステムを本格的に稼働させ始めたのです。

――タレントマネジメントシステムを導入する前は、どのように人材管理を行っていましたか。

以前はExcelで運用していて充分に使えていました。ただ、より効率よく進められるツールは何かを考えた際に、タレントマネジメントシステムの導入を決めました。使用するツールが変わっても、根底にある目的は変わりません。私たちの目的は、社内にどのような人材がいて、一人ひとりが何を目指し、その人材にどういう機会を提供すればいいかを見るという、ごくシンプルなことです。その精度を上げるためには、より多くの情報を集約し、色んな角度で人材を見ていく必要があると考えツールを変更しました。

気をつけたいのが、テクノロジーさえ導入すれば万事解決だと考えてしまうところ。いきなりタレントマネジメントシステムを入れても、当然ながら課題は解決できません。私たちはExcelで運用している時からの人材管理の蓄積があるからこそ、ツールを変えても仕組みがしっかりと回っているのだと思います。

――本取り組みでは、「好奇心型」人材の育成に注力されているそうですが、個人の好奇心を刺激することは、人材育成にとってどのような意義をもたらすのでしょうか。

基本的に、人はそれぞれ自分の価値観を持ち、やりたいことがあるはずですが、気づいていない人もいます。それを仕事や研修を通じて従業員に気づかせて、そこから湧き出た好奇心と仕事をマッチさせていくことこそが、自律した働き方に繋がると考えています。

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