現在、「雇用調整助成金」はどうなっているのか?
支給要件が複雑になったのは、縮小された「原則の基準」のほか(1)生産指標の要件に該当している場合
(2)緊急事態宣言が発出されている都道府県や、まん延防止等重点措置に指定されている市町村等に所在地のある企業が休業などをしてる場合
については別途、支給要件を設けているからです(※1)。
先ほど、4月に入って「原則の基準」が縮小されたと申し上げました。「判定基礎期間」の初日がいつかで、その基準が変わります。「判定基礎期間」とは、休業などの実績を判定する期間のことです。1ヵ月単位となっていて、「毎月の賃金の締め切り日の翌日」から「その次の締め切り日まで」の期間を指します。つまり、お給料の締め日ごとの1ヵ月間ということですね。
令和3年4月末までに「判定基礎期間」の初日がある場合、「大企業」については解雇等を行なっていなくても、助成率が4分の3(75%)となりました(解雇等を行なっていた場合は2/3になります)。また、5月と6月に「判定基礎期間」の初日がある場合の「原則の基準」については、助成率は変わりませんが、上限額が「15,000円」から「13,500円」に引き下げられます。
ですが、「緊急事態措置の対象区域」または「まん延防止等重点措置の対象区域」の都道府県の知事による要請を受け、「要請の対象となる施設」で休業や営業時間の変更などを行なっている事業主については、解雇等を行なっていない場合10分の10(100%)の助成率となりました(地域に係る特例)。
上記以外でも、「休業開始日の属する月」から遡って3ヵ月間の売り上げなどの平均(生産指標)が、「前年の同時期」もしくは「前々年の同時期」と比較して30%以上減少していれば、助成率は10分の10(100%)となります(業況特例)。
どちらのケースも1人1日あたりの上限額は15,000円ですが、解雇等を行なっていると助成率は下がり、5分の4(80%)となります。
ちなみに「大企業」は、「緊急事態宣言の対象地域に関する特例」が遡って適用されます。もし、すでに雇用調整助成金の支給決定を受けていても、条件に該当すれば追加の支給申請が可能ですから、労働局に確認してみてください。
「中小企業」については、5月と6月の「原則の措置」は、解雇等をしてなければ助成率は10分の9(90%)、上限額は13,500円となっています。解雇等をしている場合はり5分の4(80%と)に下がりますが、上限額は同じです。また、「地域特例」や「業況特例」については、大企業と同じ助成率/上限額となります。
ちなみに中小企業でも、「雇用保険の適用事業主」でなければ雇用調整助成金を使うことができません。雇用保険の被保険者を1人も雇用していない場合は、「緊急雇用安定助成金」の活用を検討してください(※3)。
それでは、このあと「雇用調整助成金の支給申請」について、注意すべきことをお話しましょう。
「雇用調整助成金の支給申請方法」と必要な書類とは
まず、気をつけなければならないのは「支給申請の期限」です。申請期限は、「支給対象期間の最終日の翌日」から起算して2ヵ月以内となっています。「支給対象期間」というのは、支給申請をする「判定基礎期間」のことを指しますが、「1ヵ月の判定基礎期間ごと」に申請することも、「複数の判定基礎期間」をまとめて申請することもできます。ただ、複数の判定基礎期間をまとめて支給申請するときでも、「毎月の判定基礎期間ごと」に申請書類を作成する必要があるので注意が必要です。また、申請書類の様式が変更になることがありますので、申請のつど、最新のものを使うようにしましょう。最新の様式は、厚生労働省のダウンロードページからダウンロードすることができます(※4)。
そのほか「生産指標の低下がわかる書類」として、売上簿や営業収入簿などの資料、労働者が休業したことがわかる出勤簿やタイムカード、シフト表の写しなどが必要になります。また、支給申請をした後、労働局から審査中に追加書類を求められることがあります。
雇用調整助成金に限りませんが、このように助成金の申請には、多大な時間と手間がかかります。このコロナ禍で経営の舵取りに集中されるためにも、助成金の申請はお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
※本内容は、2021年5月下旬時点の情報です。
※4 厚生労働省:雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)
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