「HRテクノロジー」の定義や用いられる技術は?
「HRテクノロジー」とは、「HR」と「Technology」を掛け合わせた造語を指す。よくAIやIoT、ビッグデータ、クラウド、AR、ICTなどを活用しながら、人事労務の「効率化」や「採用強化」、「人材活用」を行う意味で使われることが多い。もともと1990年代後半にアメリカで普及した「HRテクノロジー」。近年、国内でも多くの企業が関連するサービスを導入している。
●「HRテクノロジー」に用いられる技術
「HRテクノロジー」では大きく分けて主に以下の3つの技術が用いられることが多い。
・RPA
ロボットによって事務作業を代行、自動化する技術を指す。事前にデスクワークの入力手順を登録することで自動化を実現でき、労働時間や入力ミスを削減できるメリットがある。
・AI
導入することで、人間と同じ知能を持ち、人間と同じ動作が可能になる技術だ。これまでのAIは、「高度な計算」や「特定の質問への回答」が中心だったが、「自己学習して予測する」へと近年は進化を遂げている。HR分野でも人の業務を代行する役割をすでに果たしている。
・クラウド
パソコンへのインストールは不要で、デバイスと通信環境さえあれば、サービスをインターネット上で利用できる技術だ。身近なサービス例としては「LINE」や「Facebook」が該当し、アカウントを取得することで、複数名と接続することができる。
「採用」や「タレントマネジメント」、「エンゲージメント」など7種類に分けられる
「HRテクノロジー」は7つの種類に分けることができる。それぞれどのような目的があるのだろうか。(1)採用
採用は求人やマッチング、適性検査など様々なソリューションがある。近年は、AIを活用して応募者の選考を行ったり、オンライン面接を実施したりするサービスの導入が目立っている。また、採用の領域は「新卒」や「中途」、「派遣」、「アルバイト」など様々であり、目的に沿ったツール選定がポイントと言える。
(2)タレントマネジメント
テクノロジーを導入することで、従業員の能力やスキルに合った戦略的な人材の配置や育成が実現できる。
(3)エンゲージメント
従業員のコンディションを見える化し、従業員と企業の良好な関係を構築するといった組織的な人事の施策を実行することができる。
(4)勤怠管理
勤務時間や出退勤の実績が一元管理できる。最近では、見えない従業員の勤務を把握するために、テレワーク主体の企業で「勤怠管理」のHRテクノロジーの導入が増えている。
(5)労務管理
例えばWeb上で健康保険、年金、ハローワークに関連する手続きを行うことができる。e-GOV(電子政府)を活用することで、手作業を省略でき、役所の窓口まで行かなくていいため、業務の効率化につながる。
(6)給与計算
従業員の給与や経費を素早く計算することができる。テクノロジーを導入することで、国による税制変更にも難なく対応できる。
(7)健康管理
健康診断、勤怠実績のほか、産業医による面談記録をもとに従業員の健康に関する情報を一元管理できる。データをもとに「健康経営」に活用する企業が多い。
メリットは「業務の効率化」や「コスト削減」
「HRテクノロジー」を導入することによるメリットは大きく分けて3つある。(1)人事労務業務を効率化できる
負荷がかかる従業員の入退社手続き、給与計算、勤怠管理といった定型業務を自動化することで、大幅に業務量を減らすことができる。また、業務の幅が広く、工数もかかる採用業務の工程を一元化することで、人事担当者の負担が軽減する。
(2)コストを削減できる
従業員の労働時間を短縮することで、人件費を抑えることができる。また、紙で管理していた従業員の情報、採用関連の書類などの電子化は、印刷代や送料のコスト削減につながる。
(3)人事関連データの「一元管理」と「見える化」ができる
これまで紙や別フォルダで管理していたスキルや異動歴、強み、健康診断の結果などを一元管理することができる。また、一元化することで、各従業員がパフォーマンスを発揮しやすい人材の配置につなげられる。データをもとに、従業員一人ひとりや組織の現状を把握することができ、効率的なマネジメントや人材育成も実現できる。アンケートの回答結果と紐づけることで、退職リスクの軽減にもなる。
導入を妨げる「サービスの多さ」や「人材不足」
「HRテクノロジー」を導入するうえで、日本では大きく分けて3つの課題がある。(1)日本特有の文化
新しい技術に難色を示す企業は日本でまだ多い。「これまで通り」のやり方を好む文化があり、テクノロジーの導入を妨げる要因になっている。本音と建前を使い分ける日本人の特徴もあり、正確なデータを扱うことに抵抗する従業員は少なくない。
(2)サービスの多さ
HRテクノロジーの種類が7つあるだけでなく、採用の領域を見ても多くのサービスが展開されている。それゆえ、自社に合ったサービスをなかなか見つけにくい課題がある。
(3)人材不足
せっかくテクノロジーを導入しても、ツールを使いこなせる人材が社内にいなければ、ビジョンは絵に描いた餅となってしまう。また、会社全体で使わないと、データ活用は機能しないため、近年は数字やデータに抵抗がない理系人材を積極的に採用する企業が増えている。
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