企業における「創造性」とは何か
創造性という言葉を目にすると、どうもモヤモヤした気分になります。というのも、大企業の多くは、イノベーションが必要だ、創造性が重要だと言っておきながら、本音は違うからです。創造性の高い人材を採用したとしても、考え方が凝り固まった企業内では、その人材を活かせるかどうかがわからない、とついつい思ってしまいます。以前、「創造性を高めたい」と話すある大手企業の人事部の方に、創造性が高まるプログラムを提案したところ、「これでは創造性が高まりすぎるので、もっと落ち着いた内容にしてほしい」と言われたこともあります。大企業では、論理的思考を高めることについて、誰もが必要だと答えます。でも、創造性を高めることについては、なぜか全員がYESとは言わないのです。大企業では創造的な人よりも、ロジカルに説明できる人の方が重宝されてきたからでしょう。
ですが、創造性が必要ない仕事など、本当は存在しないのではないでしょうか。書類の入力などのルーティン作業であっても、常に効率化する必要はあると思います。また、近年ではITの進歩により、ある程度の事務作業は自動化できるようになりました。そのおかげで、企画業務の比率が増えている部署も多いと聞きます。
創造性というと、人によってはいわゆるゼロからイチを生み出すことを想像しますが、実はちょっとした改善に不可欠な要素なのです。
これからは創造性が求められる時代
日本の大企業の多くは、創造性を求めています。経営者の方にお話を伺うと、社員に改善や提案をしてほしいと考えていない方はいません。ところが、これが大企業の管理職になると、部下に創造性を求めている人は少ないように感じます。ただし、よく話を聞いてみると創造性自体を否定しているわけではく、ただ現状を変えることや、変えるために一時的にやることが増えることを嫌っているだけだと気づきます。もちろん、デザインやソフトウェア開発といった企業では、創造性はとても重視されています。しかし、不確実性の高いこの時代では、連続の成長が難しく、むしろインスピレーションから生まれる非連続の成長の重要性が高まってきています。大手企業では、従来の論理的思考やMBA的思考では成長ができないと考え始め、数年前からデザイン思考やリベラルアーツなど、創造性や教養を高める取り組みをしています。
米ソフトウェア大手のアドビ社が2014年に実施した調査によると、創造性の高い企業は業績も高いことが明らかになっています(※)。調査によると、創造性の向上に取り組んでいる企業の 58%が、2013 年度に前年度比10%以上増の増収率を達成していたそうです。また、創造性の高い企業は市場シェアも高いことが判明しました。
日本の大企業の顔ぶれを見てみると、リーマンショックを乗り越えて成長を続けてきた企業は、時代に合わせた創造的な製品やサービスづくりに取り組んできたところが多いような気がします。これからアフターコロナに向けて業績をV字回復させていくためには、創造性は企業にとって不可欠な要素なのではないでしょうか。
※ アドビ、創造性が企業業績に大きな影響を与えるという調査結果を発表