「オシャレであか抜けている学生が多い」「女子高生からの人気が高い都市型大学」
これが10代、20代前半の若者から見た明治大学のイメージである。その象徴とも言えるのが、駿河台キャンパスにあるリバティタワー。神田・神保町界隈の楽器街・古書街を睥睨する高さ120メートルの高層ビルである。
この10年ほどで明治大学のブランドイメージは大きく変化した。その一方、明治大学の就職・キャリア支援はどのように変化しているのだろうか。駿河台キャンパスの就職キャリア支援部を訪ね、舟戸一治部長に聞いてみた。
ゲスト
舟戸 一治 氏
明治大学
明治大学政治経済学部卒業、学校法人明治大学入職。人事部等を経て、2017年より現職。国家資格キャリアコンサルタント。全国私立大学就職指導研究会副会長。
就職キャリア支援部長
「男っぽい」「バンカラ」から「おしゃれ」「スマート」へと大学のイメージを一新
かつての明治大学といえば、野球やラグビーなどのスポーツが盛んな大学であり「バンカラ」「男っぽい」というイメージが強かったと思います。事実、男子比率がかなり高い大学でした。しかし、現在では女子比率は3割以上。現役高校・大学生からは、男子を含めておしゃれでスマートな学生が多い大学という印象を持たれています。高校生の人気大学ランキングでは第1位になることも多く、ブランドイメージは大きく変化しました。
私の所属はキャリアセンターなので、大学全体のブランディングについて詳細に説明することはできません。ただ、「少子高齢化、女性活躍、国際化などの社会変化とともに、大学経営も大きく変わらなければならない」という課題感は、全大学教職員の共通認識だったと思います。社会の変化に対応するため一つひとつ行動してきた結果が、現在のイメージに繋がっているのではないでしょうか。
例えば、都市型キャンパスの先駆けである地上23階、地下3階のリバティタワーは、都内有数の蔵書数を誇る図書館、地上17階にある学生食堂、清潔で利便性の高いトイレなどの設備を備え、学生に快適な学習・生活環境を提供しています。
就職活動の早期化により、秋に実施していた「就職進路ガイダンス」を春に移動
2017年4月から就職キャリア支援部で部長を務めていますが、この3年弱の間にも就職活動には大きな変化が起こっています。例えば、学内企業セミナーです。2017年3月の学内企業セミナーには約1,000社の企業、学生は初日だけで延べ1万人が参加し、たいへんな活況ぶりでした。
そこで3月の学内企業セミナーの企業数を絞ることを決めました。学生が集まらない状況では、せっかく参加していただく企業に失礼だと考えたためです。今年からは約300社のみでの開催を予定しています。
代わりに実施したのが業界研究セミナーです。業界別に複数企業に参加していただき、学生には1日を通して興味のある業界を研究してもらいます。今年1月の開催では、2日間で約100社に参加していただきました。
ところが、私たちが期待したほど学生は集まりませんでした。どうやら多くの学生はさらに早く活動を開始しているようです。就職市場が私たちの予想以上のスピードで変化していることを肌で感じました。学生により良い就職支援を提供するためには、イベント内容や開催時期を見直し続けなければならないと強い危機感を感じています。
変化への対応と変化を促す指導の両立
就活の開始時期が早まっていることがわかる事例をもう一つご紹介します。これまで本学では、3年生の5月に「プレ就職・進路ガイダンス」を行って就職意識を高め、9月の「就職進路ガイダンス」から本格的なキャリア支援プログラムを実施してきました。5月時点では学生の就職意識は低く、「プレ就職・進路ガイダンス」に出席する学生は少ない傾向にあったためです。
そこで、今年からは秋に実施していた「就職進路ガイダンス」を春に移動させることを決定しました。
ただ、「多くの学生」は「すべての学生」を意味しているわけではありません。依然として「就活は3月にスタート」と考えている学生もいます。キャリアセンターは全ての学生の就職支援をする存在ですので、就職活動の早期化に同調するだけではなく、「企業の採用活動はさらに早まる可能性がある。就職を希望する企業へのエントリー機会を逃さないよう、早い段階から準備を怠らないことが必要である」と自覚を促す活動も同時に実施しています。
就職キャリア支援の内製化へのこだわり
他大学の就職・キャリア支援と比較した特徴を申し上げるならば、個々の施策そのものではなく、「体制」だと考えています。就職キャリア支援をアウトソーシングしている大学も多いようですが、本学では立案・運用のほとんどを手作りで行っています。「学内に知見を蓄積する」「就職活動の変化にスピーディーに対応する」ということが目的です。また、最近は新たに動画面接へのサポートも実施し始めました。近年はエントリーシートや1次面接で動画の提出を義務づける企業が急増しています。ただ、自分で自分を上手に撮影するのはとても難しく、学生たちはとても苦労しているようでした。そこで、効果的な撮影方法をレクチャーするためのセミナーの開催や、eラーニングコンテンツの撮影などで使うスタジオを学生にも開放して、動画撮影に利用してもらうなどの支援を始めました。
個別相談は年間約2万件。国家資格キャリアコンサルタントの資格を有する職員を中心に全キャンパスで学生をサポート
本学は1学年に約8,000人が在籍しておりますが、全学生の就活動向を把握してはいません。全員に対する調査は卒業時に進路先を提出してもらう「進路調査」のみです。これは、明大の理念が「個の確立」にあり、個人を重視する学風と関係があります。就職キャリア支援部の基本方針は、学生に「自分で考え」「活動し」「決定する」ことを求める、「主体的就活」です。「個」が基軸にあり、自分が選ぶのです。主体的に就活をする中で得られるスタンスや能力は、社会に出たあとのキャリア形成にも役立つはずです。
とはいえ、学生が希望する限りは個別相談にも力を入れて手厚く支援しています。相談件数は年間2万件、1日に100件以上という日もあります。相談内容はさまざまで「何もわからないけれど来てみました」という就活初期の学生もいれば、「これから面接に行くのですが、緊張しているので気分転換するために来ました」というリラックス目的の学生もいます。
このような多種多様な相談に応じるため、各キャンパスには相談員が常駐しています。現在,就職キャリア支援センターには、カウンセラーとして公的な資格を有する専任職員が10名おり、今後も資格取得を計画しています。
明治大学の企業連携。学内企業セミナー参加企業を公募
明治大学は企業との連携に熱心です。夏休みに実施している「All MEIJIインターンシップ」は「5日間以上、かつ35時間以上」を条件にしていますが、昨年は約300社に協力していただいています。多くの実施企業は「明大生を採用したい」と考えておられるようですが、10年以上採用がない企業もあります。それでもインターンシップでは明大生を受け入れていただいています。逆にいえば、10年以上採用実績がない企業でも、学生にとって有意義なインターンシップだと感じれば積極的に学生に紹介するということです。
インターンシップ以外に企業に参画いただく大きなイベントは、前述しましたように、3月の学内企業セミナーと1月と2月の業界研究セミナーです。2017年までの学内企業セミナーには約1,000社、今年は約300社が参加予定で、業界研究セミナーでは1回につき約100社に協力していただいています。
セミナーは採用実績企業からお招きするケースが多いです。ただ、「公募」というチャネルも設けていますので、関心のある企業はぜひ申し込んでいただければと思います。
独自の求人情報検索システム『M-Career』
大量採用を目指す企業にとっては就活ナビサイトなどのサービスが有効なのでしょうが、「特定大学から採用したい」「限られた人数のみを採用したい」という企業にとっては、大学との直接的な関係構築が有効だと思います。また、内定が得られず、あるいは内定先に満足できず、6月以降に就職キャリア支援部に相談へ来る学生も数多く存在します。留学生や体育会の学生も同様です。そうした相談を受けた際、求人票を登録してもらっている企業は「明大生を採用したい」という意思が明確なので、学生に紹介しやすいのです。
その後、ご希望があればキャリア支援課までご連絡いただき、直接お話を伺えればと思います。みなさまからのご連絡を心よりお待ちしております。
※このインタビューは2020年1月に行われたものです。
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