ProFuture代表の寺澤です。
リクルートキャリアが、就職情報サイト「リクナビ」の利用行動履歴などから得られた学生データを基に、企業に提供していた内定辞退予測データ『リクナビDMPフォロー』が大きな問題になっています。プライバシーポリシーの不備や、学生への同意の取り方については、ある意味単純で、分かりやすいものに「改善すればいい」という話ですが、ことはそこにとどまらず、採用といった人事活動においてHRテクノロジーがどこまで個人データを使っていいのか、という問題にまで発展してきています。
ネット等で得られた個人データの活用(ビッグデータ解析)については、HR領域にかかわらず、世界的にもルールをどうするか激しい議論が行われています。GAFAといった巨大企業がデータ活用で社会を牛耳ることを規制する意図もあり、特にヨーロッパ(EUを含む欧州経済領域)では、GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)という法律で厳しく規制をしています。アメリカはそれに比べると規制が弱いようで、まずはやってみて、問題が起こったら改善すればよい、というのがアメリカ的な考え方・やり方でしょうか。そのほうが進化を阻害しないということかもしれません。ただ、モラルなきテクノロジーの進化は恐ろしい面もあるので、規制・自粛はもちろん必要です。
第102回 人事担当者の人柄や対応の良さで志望度は上がる ── HR総研「2020年卒学生 就職活動動向調査」
さて、今回の件に話を戻すと、一部の企業が起こしたこととして問題を矮小(わいしょう)化するのではなく、人材採用、ひいては人事全般領域の個人データ活用のルール作りのきっかけになればいいと思います。社員のネット利用行動履歴などを用いた退職予測などもルールを明確化したほうがいいでしょうし、高度化するタレントマネジメントシステムについても同様です。一方で、単に「HRテクノロジーは怖い・ダメだ」というのではなく、テクノロジーが進化し変化する環境の中で、適切な利用ルールを、ユーザー、サービス提供者、サービス利用者が、共に考えていくことが重要だと思います。

HRテクノロジーは、ユーザーにもサービス利用者にも大きなメリットを提供するものであり、企業にとっては人材活用の重要なツールであり、ビジネスの競争力を高めるツールにもなり得ます。バランスが取れた議論の発展こそが、人事の世界でも、人材サービス業界としても重要だと思います。人材データの分析やHRテクノロジーの活用を「産・学・官」で普及・推進する団体である一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、2020年3月をめどに採用・人事データの取り扱いをめぐるガイドラインの公表に向けて、策定作業を急ぐことにしたようです。併せて、人権やプライバシーを尊重し、労働法も熟知した上で、ピープルアナリティクスやHRテクノロジーの活用を支援できる人材育成に努めるための資格制度を創設することも検討していくようです。

ワーク・ライフ・バランスを重視する学生たち

さて今回は、HR総研が6月12日~25日にかけて、「楽天みん就」会員の就活生を対象に実施した、「2020年卒学生 就職活動動向調査」の結果を紹介したいと思います。

まずは、応募先企業を探す際に重視した項目についてです[図表1]。この設問は今回初めて聞いたものなので、経年比較ができる過去データはありません。ですから、「今年の学生」というよりも「いまどきの学生」として、ご覧いただければ幸いです。
第102回 人事担当者の人柄や対応の良さで志望度は上がる ── HR総研「2020年卒学生 就職活動動向調査」

転勤の有無が志望度に影響しない学生は3割程度

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