2019年4月1日、労働者の心身の状態に関する情報(以下、「健康情報」)に関し、改正労働安全衛生法(以下「改正法」)が施行されました。またこの改正内容のうち、産業医・産業保健機能の強化策の一環として、健康情報保護に関する措置「健康情報取扱規程」が事業者に義務づけられることになっています。健康診断の結果などは従業員の個人情報となりますが、この取扱いに関するルールなど、事業者側はその対応を進めていく必要があります。
2019年4月から施行。事業者に課された「健康情報取扱規程」とは

健康情報取扱規程が定められた背景、規程内容

改正法は、事業者に対し①労働者の健康確保に必要な範囲内での健康情報の取得・利用、②安全管理措置を義務づけています。これは、労働者の健康を保持増進するためには、その担保として健康情報の保護を図らなければならないという背景によるもの。労働者の健康を管理するためには、まず事業者が健康情報を取得し、必要に応じて専門家に提供することになります。この取扱いについて労働者が不安を抱けば自己の健康情報を提出することを拒むこととなり、これでは施策の実効性が低下してしまうことになります。

改正法は、事業者に対し、産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要な情報を提供することも義務づけています。この情報とは、健康診断や面接指導の結果による就業上の措置の内容、1か月80時間超の残業をした労働者の氏名と超過した時間および労働者の業務に関する情報を指します。労働者の健康情報が含まれているので、これを保護しなければ、労働者が安心して健康相談をすることができなくなってしまいます。

だが、健康情報は保護するにしても、事業者ごとに取扱いが異なると混乱を招くため、改正法に基づき、厚生労働大臣は2018年9月7日、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下「指針」)を策定しました。また、取扱いのルールを明確化するため、「健康情報取扱規程」の策定を求めており、事業規模での例外はありません。安全配慮義務を履行するためにも、全事業者が取扱規程を策定しなければならないのです。

そうした「健康情報取扱規程」には次の9つの事項を定めています。
(1) 健康情報を取り扱う目的と取扱方法
(2) 健康情報を取り扱う者とその権限、取り扱う健康情報の範囲
(3) 健康情報を取り扱う目的等の通知方法と本人同意の取得方法
(4) 健康情報の適正管理の方法
(5) 健康情報の開示、訂正等(追加・削除を含む)および使用停止等(消去・第三者への提供の停止を含む)の方法
(6) 健康情報の第三者提供の方法
(7) 事業承継、組織変更に伴う健康情報の引継ぎに関する事項
(8) 健康情報の取扱いに関する苦情の処理
(9) 取扱規程の労働者への周知の方法

事業者が注意すべき6つのポイント

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